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Papyrus

考えたことや調べたことを残しておこうと思います。

怪我をしやすい心理・リハビリが長引く心理

テスト勉強 Psychology

リハビリテーションの授業で使っている教科書に『Psychological Aspects of Rehabilitation』という章がありました。テスト勉強のためにじっくり読んでいたのですが、面白いなと思ったのでまとめてみることにしました。

 

思えば今まで、怪我をした選手の身体を競技復帰まで回復させていくことには一生懸命でしたが、あまり心にはアプローチしていなかったなと思います。日本では特に心・メンタルは自分で何とかするものという意識が選手自身にも、周囲にもあるような気がするし、体系立てて怪我人の心をサポートするという取り組みはどこに行ってもあまり見られなかったように思います。

 

今回この記事を書くことで、今後「心と身」両方へアプローチする包括的なリハビリを考えられるようになれれば良いなと思っています。

 

さて、怪我をしやすい人ってどんな人だと思いますか?

筋力、筋持久力、柔軟性、固有感覚、、、身体的要素はたくさんあがりますが、心理的要素はどうでしょう。

 

WilliamsとAndersonのStress and Injury Modelによれば、1) たくさんのストレッサーの経験がある人*、2) ストレス反応を悪化させやすい人、3) ストレスコーピングの手段が少ない人が怪我をしやすいのだそうです。これらの傾向のある人はストレスフルな状況に置かれたとき、そうでないひとよりも、その状況をよりストレスフルな状況であると認知し、注意が削がれ(注意を向ける範囲が狭くなったり、自分の外ではなく内側に注意を向けがちになり)怪我をしやすくなるようです。1

* 例: 主要なライフイベント、日常のストレス、怪我の経験

 

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その他にも不安傾向の高い人 (high trait anxety) や自尊心 (self-esteem) が低い人、苛つきやすい人は傷害リスクが高いと結論づける研究や、ジュニア世代のサッカー選手においてネガティブなライフイベントのストレスが傷害リスクを高めるという研究もあります。2-6

 

16歳から36歳のサッカー選手の傷害発生を4ヶ月間追った研究では、その4ヶ月間で怪我をした人たちは怪我をしなかった人たちと比べると、ストレスコーピングのスキルとして、逃避(behavioral disengagement; ストレッサーと闘うのを諦めたり身を引いたりすること)と自己批判(self-blame; ストレスフルな状況が自分に起因すると考えること)の2つのパターンを頻繁に使っているという結果になりました。5

 

ここに挙げられた特徴を見ると、とてもざっくりとですが、全体的には不安傾向が強くてストレスを溜め込みやすい人や、ストレスに対してうまくコーピングができない人が怪我をしやすい人だと言えるのかなと思います。

 

また、ネガティブなライフイベントが傷害リスクを高めるという結果から、普段はうまくストレスをコーピングできる人でも、大きなストレス(例えば、極端なところで親の死や、もう少し身近なところで失恋など)によって怪我のリスクは上がるだろうと言えると思います。

 

環境がガラッと変わる部活の新入生、特に大学一年生は初めて親から離れて暮らす人も多く、これはとても大きなストレスになり得ます。こういった時期には「いつもどうやってストレス解消してるの?」「何をするのが好きなの?」なんて会話を意識的にしてみるのもいいかもしれません。

 

次は怪我への反応です。

Wiese-Bjornstalらが提唱したIntegrated Model of Response to Sport Injury Rehabilitationでは、『アスリートがその怪我をどのように認知するか、どのような感情的な反応(その怪我に対してどう感じるか)や、行動的な反応(怪我が起きたという状況に対してどう対処するか)をするかは個人的な要素(性格、コーピングスキル、気分、健康状態、食生活、etc.)や環境的な要素(競技、怪我人へのサポート体制など社会的・環境的要因)によって決まる』と言われています。7

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例えば健康状態が変われば、怪我への認知も、抱く感情も、取る行動もそれによって変わるということです。これだけ多くの要素が影響するので、認知・感情・行動はリハビリ期間中、ポジティブになってみたりネガティブになってみたり流動的に行ったり来たりします。この心理的な行ったり来たりのサイクルがリハビリの質や進度に大きな影響を与えるとも言われています。7

 

さて、問題はリハビリ中、ATがどのように選手をサポートできるかです。

NATAに登録しているATCのうち1000人にメールを送り、リハビリ中の選手の心理的側面に関する調査を行った研究があります。8

 

1000人のうちレスポンスがあったのは226人。そのうち182人がSucceessful Coping Behaviorとして挙げた項目は『positive attitude; 前向きな姿勢』、次に多かったのは149人で『adherence and treatment compliance; 指示したことを忠実に実行しようとすること』、3番目は38人で『seeking out social support; 社会的な支援を得ようとすること』、最後に26人で『using psychological strategies; 心理学的な対処方法を利用しようとすること(自分のリハビリのゴールを設定するなど)』でした。8

 

逆にUnsuccessful Coping Behaviorとして挙げられたのは、『poor adherence and attendance; 指示に従おうとしないことやリハビリに来なくなること』が最多で75人、次に『negative attitude; 後ろ向きな姿勢』が73人、3番目が『avoidance and withdrawal; ATやコーチ、チームメイトを避けるようになること』で70人、4番目は『poor effort and motivation; 努力やモチベーションが欠けていること』で69人、最後は『negative affect; ネガティブな感情(怒り、落ち込み、気分の上がり下がりなど)』で63人でした。8

 

この調査の他にも『rehabilitation and treatment compliance; リハビリやトリートメント中に指示に従うこと』が怪我というストレスにうまくコーピングすることができた選手の重要な特徴であり、『lack of adherence or poor compliance; 忠実に指示に従わないこと』がうまくコーピングできなかった選手の1番の特徴であったとする研究もあります。9,10

 

つまりリハビリ中、選手をsuccessfullな方向へ導くためには、いかに前向きにリハビリやトリートメントに従事させるかが大きな鍵になるということでしょう(なんかとても当たり前のことを言っている気がしますが...)。

 

上の研究の中で有効であるだろうと言われていた方法は、ATがリハビリのプロセスを選手によく教育して理解させること。それから、ATがリハビリのエクササイズの目的、競技復帰のためにどのように役に立つのかを明確に説明すること、リハビリのエクササイズの種類に幅を持たせること。8

 

他には、リハビリのエクササイズを一緒に行ってくれるバディを見つけること、同じ怪我からリハビリを通して競技復帰を果たした仲間とコミュニケーションを取らせる、など。8

 

もしもこれらの対策を用いても、ほとんど意味がない(例えばリハビリに来ない、来ても真剣に取り組んだり指示に従う意欲を見せない)場合には、より根深い問題のサインかもしれないのでメンタルヘルスの専門家に相談することを考えたほうが良いかもしれません。8

 

また、選手が怪我をしたというストレスを受け入れられていない状態や受け入れるのに苦労している状況では、チームの活動になるべく多く参加させることや、リハビリの短期目標を一緒に設定することなども有効だと言われています。

 

これは、授業中に先生がおっしゃったことですが、モチベーションの上がらない時にはSNSに自分のリハビリの写真を載せてみるようにアドバイスをするそうです。多くの場合、友達が応援のコメントをくれますね。「社会的な支援」というと大袈裟に聞こえますが、確かに現代ではSNSは支援の言葉をかけてもらうのに一番身近な場所かもしれません。

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話は変わります。『強いメンタル』ってなんでしょう?

私は調べてみて、『ストレスに耐える力』ではなくて『ストレスを解消する力』だと思ったんです。性格や日々のストレスやライフイベントのストレスは変えようと思っても難しい場合が多いと思います。不安傾向の強い人はやはりずっとそういう傾向にある気がするし、日常のストレスに関しても、「あ!卵と牛乳買い忘れたー!!」さえちょっとしたストレスです。ましてや家族の死などの折にストレスを感じずにいられる人はいないでしょう。

 

ストレスを感じることが悪いことなのではなく、ストレスにうまく対処する(コーピングする)スキルを持っていることが『メンタルの強さ』なのではないでしょうか。これからアスリートと関わるとき、コーピングを促すことが私のひとつの役割になるのかなと思います。

 

スポーツでの『メンタルの強さ』はここ一番というときに実力を発揮出来るとこや、ストレスフルな状況でも強気に立ち向かえること、というイメージがありますが、これらは『一心不乱』な心の状態で達成されると思います。ストレスによって怪我のリスクが上がるメカニズムが、ストレスによって注意が妨げられることで怪我が起こりやすくなる、ということを考えると、ストレスをうまくコーピングできず蓄積した状態はやはりスポーツにおける『メンタルの強さ』にも影響するのかなと思いました。

 

 

参考文献

1. Williams JM, Andersen MB. Psychosocial antecedents of sport injury: Review and critique of the stress and injury model. JOURNAL OF APPLIED SPORT PSYCHOLOGY. 1998;10(1):5-25.

2. Petrie TA. Coping Skills, Competitive Trait Anxiety, and Playing States: Moderating Effects an the Life Stress-Injury Relationship. Journal of Sport and Exercise Psychology. 1993;15(3):261-274.

3. Smith AM, Stuart MJ, Wiesebjornstal DM, Milliner EK, Ofallon WM, Crowson CS. COMPETITIVE ATHLETES - PREINJURY AND POSTINJURY MOOD STATE AND SELF-ESTEEM. MAYO CLINIC PROCEEDINGS. 1993;68(10):939-947.

4. Johnson U, Ivarsson A. Psychological predictors of sport injuries among junior soccer players. Scandinavian Journal of Medicine & Science in Sports. 2011;21(1):129-136.

5. Ivarsson A, Johnson U. Psychological factors as predictors of injuries among senior soccer players. A prospective study. Journal of Sports Science & Medicine. 2010;9(2):347-352.

6. Junge A. The influence of psychological factors on sports injuries - Review of the literature. AMERICAN JOURNAL OF SPORTS MEDICINE. 2000;28(5):S10-S15.

7. Wiese-Bjornstal DM, Smith AM, Shaffer SM, Morrey MA. An integrated model of response to sport injury: Psychological and sociological dynamics. JOURNAL OF APPLIED SPORT PSYCHOLOGY. 1998;10(1):46-69.

8. Clement D, Granquist MD, Arvinen-Barrow MM. Psychosocial Aspects of Athletic Injuries as Perceived by Athletic Trainers. JOURNAL OF ATHLETIC TRAINING. 2013;48(4):512-521.

9. Larson GA, Starkey C, Zaichkowsky LD. Psychological aspects of athletic injuries as perceived by athletic trainers. SPORT PSYCHOLOGIST. 1996;10(1):37-47.

10. Arvinen-Barrow M, Hemmings B, Weigand D, Becker C, Booth L. Views of chartered physiotherapists on the psychological content of their practice: A follow-up survey in the UK. JOURNAL OF SPORT REHABILITATION. 2007;16(2):111-121.

  

CAI Article Review - Sensorimotor Function

Ankle Instability Neuromuscular changes テスト勉強

続きを書くと言いながら、全然書けていなかった記事がたくさんありますが、その中のひとつ、CAI (Chronic Ankle Instability) に関して、最近授業で読んで面白かった論文があるので日本語でまとめてみようと思います。

 

この記事を書いたのは一年も前かぁ...としみじみする気持ちは置いておいて...

CAIについて考察した上の記事でまとめた内容は、

1) CAIとはankle sprain受傷後長い間続く不安定感のことで、

2) Ankle sprainの既往者にはATFLの厚さが増すという構造的な変化が確認されたが、この変化はCAIのないankle sprain既往者にも見られたため、この変化はCAIのonsetに直接関係するものではないだろう。

3) CAIを持つグループの歩行中の下肢の筋のアクティベーションのタイミングを見てみると、健常者よりも早い段階で長腓骨筋がアクティベートされており、不安定さを克服するための戦略とみられるのfeed-forwardが学習されていた。

4) 一方、このfeed-forwardの学習により、本来足関節の重要なdynamic stabilizerとして機能すべき長腓骨筋がその役割を果たしていない可能性もある。

5) 長腓骨筋の反射的収縮は足関節の内反捻挫を防ぐ重要なメカニズムであるが、CAIのグループの長腓骨筋では、この反射が上手く機能していないことがわかり、

6) この反射の機能不全が、CAIの「不安感」や「不安定感」の正体であるのではないか。

というものでした。

今回紹介したい研究は『長腓骨筋の反射的収縮は足関節の内反捻挫を防ぐ重要なメカニズムであるが、CAIのグループの長腓骨筋では、この反射が上手く機能していないことがわかり』の部分に関連します。

 

従来、足首のリハビリといえば筋力やバランスなどのmotor outputにフォーカスする傾向にありますが、そのような方法ではCAIの発生率を減らすことはできないと言われています。

 

そこで今回紹介する研究では、従来のmotor outputではなく、sensory inputに焦点を当てたトリートメントが、CAIの改善に有効かどうかを検証しました。

Sensory-Targeted Ankle Rehabilitation Strategies for Chronic Ankle Instability (Mckeon & Wikstrom, 2016)

 

上に貼った記事の中でも反射の説明をしていますので詳しくはそちらを参照していただきたいと思いますが、反射によるpostural controlは、sensory input ➡︎ 脊髄反射 ➡︎ motor outputという流れで成立します。Sensory inputに焦点を当てるというこの研究は、feed-back (sensory input) の情報量を増やすことで、adjustment (motor output) の改善できる可能性があるだろうという仮説のもとに考えられたものです。

 

▶︎研究デザイン

Randomized controlled trial 

 

▶︎被験者

2012年1月から2014年2月までにアメリカ国内の3つの公立大学からリクルートされたCAIを持つ一般の人口(教授、学生、職員など)

ここでのCAIの定義は、1) 過去6ヶ月以内に最低2回giving awayを経験したこと、2) FAAM*において患側が健側の90%以下、そして3) FAAM Sports**において患側が健側の80%以下

* ** 主観的な足首の機能(後ほど詳しく説明します)

 

▶︎介入(トリートメント)

各グループ、2週間で6回、5分間のトリートメント

1) 足関節モビリゼーション(Oscillation Grade III で 2分 X 2セット)

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2) 足底マッサージ(5分間)

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3) ふくらはぎストレッチ(3セット X 3分間 10秒レスト)

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4) コントロール群

 

▶︎サンプリング

3つのトリートメント群とコントロール群の4グループに各20名ずつ

 

▶︎アウトカム

1) Patient-oriented measurements

FAAM、 FAAM Sports、 giving awayの回数、 NASA PASS***を1) 最後のトリートメントから72時間以内と、2) 1ヶ月後のフォローアップの2回測定。

*** 有酸素的なフィットネスレベルの指標

 

CAIを定義するのにも使われたFAAMとFAAM-Sですが、これは一体何かというと、主観的な足関節の機能を把握するために作られた質問紙です。

FAAMは患者のADLに焦点を当てた質問紙で、こんな感じ⬇︎

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FAAM-Sはスポーツにより特化した質問紙で、こんな感じ⬇︎

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少し本題から外れてしまいますが、アメリカでは今FAAMのような質問紙がたくさん作られ、使われています。このような質問紙をリハビリの過程に取り入れることで、そのリハビリが有効なのか見直す必要があるのかを客観的に把握することができるからです。アメリカでもATは他のhealthcare professionと比較して低く見られることがあるという現実があります。そこで、自分たちの取り組みをより客観的データによってバックアップしていこうという流れの中のひとつであるようです。

 

2) Clinician-oriented measurements

荷重下での背屈可動域と片足バランスを1) 一回目のトリートメントの直後と、2) 最後のトリートメントの72時間以内の2回測定。

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▶︎結果

1) Patient-oriented measurements

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どのトリートメントがどのoutcome measurementにおいて有効だったのかを表に示しました。⭕️はコントロール群と比較して有意差あり (p=0.10) かつMDC (minimal detectable change) を上回る、❌はそれ以外。

 

最後のトリートメントから72時間以内⬇︎

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1ヶ月後のフォローアップ⬇︎

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2) Clinician-oriented measurements

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ここでも同じように表にまとめました。

 

一回目のトリートメントの直後⬇︎f:id:miwakosuzuki:20170212140333p:plain

 

最後のトリートメントから72時間以内⬇︎

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▶︎結論

Sensory inputをターゲットとした3種類のトリートメントは、それぞれCAIを持った患者の主観的な足関節の機能、荷重時の背屈または片足バランスを改善した。

 

私がこの研究が面白いなと思ったのは、自分自身が今までここで使われた3種類のトリートメントを「sensory inputを改善する」という目的で行ったことがなかったからです。例えばストレッチは筋の柔軟性獲得のためとか、関節モビリゼーションは痛みの軽減・可動域獲得のためとか、他の目的で行ったことはありますがsensory inputという観点には気づいていませんでした。

 

3つのトリートメントの中で全てのアウトカムで改善が見られたものはありませんが、これらのトリートメントはもちろん単独で使われるものではありません。全てをひとつのリハビリプログラムに取り入れることでより多くのアウトカムを獲得するように工夫する必要があります。

 

関節モビリゼーションも足底マッサージもストレッチも私は足関節のリハビリでは毎回取り入れていたと思うので、この論文を読む前と読んだ後では私が作るリハビリプログラムにはもしかしたらあまり変わりはないのかもしれません。でも、これを知ったことで選手のセルフケアへのモチベーションを高めるための説明は絶対に以前よりもうまくできると思います。

 

ゴルフボール等を使ったマッサージやストレッチはもちろん自分でできます。足関節のモビリゼーションも、今回使われたのはgrade IIIのoscillationで自分自身で同じような刺激を与えるのは少し難しいかもしれませんが、様々なsensory inputを与えるという点では自分でできるモビリゼーションも有効かもしれません。

 

この論文を読んだあと、たまたまYoutubeで「あれ、なんか聞き覚えがあるなぁ」という情報に出会いました。26分ごろから始まる一流スポーツ選手の共通点に関する話題です。スポーツ記者が様々な一流スポーツ選手を取材する中で、彼らは10歳までに足裏をたくさん刺激していることに気づいたと言います。


もちろん科学的に証明できている訳でもなんでもありませんが、一流スポーツ選手特有のpostural controlの能力の高さは、もしかしたら神経系の発達が著しい幼少期に足の裏にたくさん刺激を受けることで培われたという側面があるかもしれないのかな、ということを考えながら聞いていました。

 

 

 

 

Mckeon PO, Wikstrom EA. Sensory-Targeted Ankle Rehabilitation Strategies for Chronic Ankle Instability. Medicine & Science in Sports & Exercise. 2016;2015;48:776-784.

 

今更だけど羽生くんの一件を考えてみる。

Concussion

今更ですが、2014年にあったフィギュアスケートの羽生くんの試合直前公式練習での衝突事故、それから棄権せずに試合に臨んだ一件について考えてみようと思います。 

 

日本では大きなニュースになったと思うので何があったかを知らない人はあまりいないと思いますが、試合直前の衝突の映像を見つけたので貼ります。正直私は手術の映像は全然平気ですが、意識のある人が痛がってる映像は結構苦手です。この映像もとても痛々しいです。苦手な方は見ないことをお勧めします。

 

    

 

さて、このとき羽生くんは脳震盪を起こしていたと言われています。今回は脳震盪がどういうものなのかをThe 4th International Conference on Concussion in Sportでの consensus statementやNATAのposition statement、それからいくつかのreveiw articleをまとめながら勉強してみようと思います。

 

Consensus Statement on Concussion in Sport: The 4th International Conference on Concussion in Sport, Zurich, November 2012では脳震盪 (concussion) は以下のように定義されています。

 

Concussion is a brain injury and is defined as a complex pathophysiological process affecting the brain, induced by biomechanical forces.

* pathophysiology = 病理生理学

* biomechanical forces = 生体力学的な力 (日本語の方がわかりにくい!)

 

また以下の4点も脳震盪を定義する上で知る必要があります。カッコ内は訳ではないですが、大雑把にどんなことなのかを書いてみました。

1. Concussion may be caused by a direct blow to the head, face, neck, or elsewhere on the body with an ‘‘ impulsive’’ force transmitted to the head.

( 頭部への直接的な衝撃だけでなく顔や首、その他の部位においても頭部へ衝撃を伝え得る場合には脳震盪を起こす可能性があるということ)

 

2. Concussion typically results in the rapid onset of shortlived impairment of neurologic function that resolves spontaneously. However, in some cases, symptoms and signs may evolve over a number of minutes to hours.

(脳震盪はたいていの場合、神経性の症状や徴候は一時的で自然に解消されるけれど、数分または数時間で症状や徴候が強くなる可能性もあるということ) 

 

3. Concussion may result in neuropathologic changes, but the acute clinical symptoms largely reflect a functional disturbance rather than a structural injury, and as such, no abnormality is seen on standard structural neuroimaging studies. 

(脳震盪の症状は脳の構造上のダメージが理由というよりは、機能上の問題が大きな理由であるようで、CTやMRIなどの画像には異常が見られないということ)

 

4. Concussion results in a graded set of clinical symptoms that may or may not involve loss of consciousness. Resolution of the clinical and cognitive symptoms typically follows a sequential course. However, it is important to note that in some cases symptoms may be prolonged.

(脳震盪の症状に意識が無くなることは必ずしも含まれていないということと、臨床的な症状と認知能力の低下は徐々に解消・回復されるけれど、症状が長引くとこもあるということを知っておかなければならないということ)

 

脳震盪の症状や徴候はConcussion (mild traumatic brain injury) and the team physician: a consensus statement – 2011 updateでは以下のようにまとめれていました。

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また、先に脳震盪の定義を示すのに使ったConsensus Statement on Concussion in Sport: The 4th International Conference on Concussion in Sport, Zurich, November 2012では症状や徴候は以下の5項目にまとめられています。

(a) Symptoms: somatic (eg, headache), cognitive (eg, feeling like in a fog), and/or emotional symptoms (eg, lability);

(b) Physical signs (eg, loss of consciousness, amnesia);

(c) Behavioral changes (eg, irritability);

(d) Cognitive impairment (eg, slowed reaction times); and/or

(e) Sleep disturbance (eg, insomnia).

 

どの文献においても、どの競技の協会のガイドラインにおいても受傷したその日に競技に復帰することはあってはならないと述べられています。脳震盪を起こした選手を練習や試合から外さずに、そのvulnerableな脳へ2回目のインパクトがあると、セカンドインパクトシンドロームというまさに命に関わる状況へ発展してしまう恐れがあります。そのため、アスリートの命を守るためにも受傷が疑われる状態には敏感に反応して、受傷した選手を練習から外さなくてはなりません。

 

脳震盪が疑われる選手に対してサイドラインでテストされるのは、頭痛や吐き気などの主観的な症状とバランスと認知能力です。脳震盪にはいくつかサイドラインのテストのためのツールがあります。

 

日本語にも訳されて、日本で一番頻繁に目にするのがSCATだと思います。SCATは症状のチェックリスト、バランス能力、認知能力に加えて意識レベルを見るグラスコーコーマスケールや頚椎の可動域・四肢の感覚&筋力のテストも含まれています。スポーツ中に衝突があった際には脳震盪だけでなく頚椎の怪我や脳震盪以外の頭部外傷の可能性もありますが、SCATは最も包括的で、脳震盪をrule-inするという目的の他に頚椎損傷などの可能性をrule-outするためにも使うことができます・(SCAT3日本語訳: http://www.fujiwaraqol.com/concussion/scat3_ja.pdf

 

SACは認知機能のテスト、BESSはバランスのテストです。(SACとBESSはSCAT3の中にも含まれています。)ISUの脳震盪のサイドラインアセスメントのツールはグラスコー・コーマ・スケール、自覚症状のリスト、SAC、BESSを組み合わせたものでした。

 

脳震盪の評価を取りこぼしなく行うのに一番簡単な方法は、SCATを理解して、印刷したSCATをアスレティックトレーナーとして働いているときに身につけておくことだと私は思います。

 

サイドラインの評価、それから競技復帰までの過程での評価でとても重要になるのがベースラインのデータです。バランスや認知能力は個人差が大きく、受傷と非受傷、またはバランス・認知機能が回復したかどうかを分ける普遍的なボーダーラインが存在しないからです。先日始まったフットボールの実習ではpre-participation examの中でSACとBESSをテストしました。今後脳震盪が疑われた際にはこのテストの結果がベースラインとして、脳震盪の評価をするのに使われます。

 

 

実際に受傷するとどんな感じになるのかをもう少しよく理解するために動画を探してみました。このビデオは元アメフト選手の脳震盪の経験談です。彼の話から、認知の機能 (例えば「集中すること」) などに明らかに支障があったことがわかります。

               

いくつか特徴的な発言を挙げてみました。

- アニメでよくあるように星が見えた

- 話しかけてくる (一人の) 相手が2カ所にいるような感じがして、この2つをくっつけるように集中しなければいけなかった

- 誰かが話しかけてきても、聴こえてはいるけど聞いてはいなかった

- 自分をリモートコントロールしているような感覚だった

 

              

このビデオではは大きな衝撃のあと明らかにフラフラしている選手の姿がいくつか映されていますが、ここまで明らかでないことも往々にしてあります。私自身の経験でもバレーボールの練習中に予期せず一人の選手の頭にスパイクが当たって、少しの間動けず頭痛や気持ち悪さを訴えたことがありました。怖いのはコーチや他の選手からはプレー続行可能に見えることです。また、受傷した選手自身がそこまで重く捉えていない場合もあるし、周りからの「プレーできるだろ」という視線を感じてプレーに戻ろうとする場合もあります。

 

結局、私はそれが起きた日にその選手をその日の練習から外すことはできませんでした。 また、その日、他の選手から、ボールが顔にあたったくらいで練習から抜けさせようとするのは私がその選手を甘やかしてるんじゃないかという指摘も受けました。前もってチーム全体に脳震盪というものを説明をしておらず脳震盪が起きたときに私が取るべき態度を示していなかったこと、またそれによってチームの中で不満が色々な方向へ生まれてしまったことを反省しました。

 

National Athletic Trainers’ Association Position Statement: Management of Sport ConcussionにはEducation and Preventionという項目が設けられ、アスレティックトレーナーはコーチや保護者が脳震盪に関して適切な知識を身につけられるように働きかけるべきであるということが述べられています。

 

いざというときに選手を守れる状況を前もって整えておくことが重要だと思います。 何事にも言えることだと思いますが、非常事態が発生したとき人はそれぞれの立場の意見を主張し合って収集がつかなくなることが多い気がします。あらかじめチームのメンバーからも理解されたガイドラインを持つということは非常時の混乱を避ける上でも重要かと思います。

 

次に脳震盪のpathophysiologyをMarshall (2012) のSports-related concussion: A narrative review of the literatureで説明されていることを中心にまとめてみたいと思います。

 

脳震盪の原因は頭部の急な加速だと言われています。下の動画では、衝撃からの頭部の急な加速・減速の際に脳が頭蓋骨の中でどのように動いているのかが再現されています。

               

脳は無数のニューロンから構成されていますが、加速の際、ニューロンは引き伸ばされたり、剪断の力が加わります。衝撃の直後に少しの間意識が無くなることがありますが、それはこの牽引や剪断などの物理的な力によって脳幹のあたりでニューロン間でのコミュニケーションが中断されることが原因だと言われています。

 

また、衝撃時(直後)ニューロンが物理的な力によって形が変えられることで、ニューロンの細胞膜内外のイオン(Na+, K+ など)のバランスが崩れます。詳しくは下の動画を見てもらえたらと思いますが、ニューロン間のコミュニケーションはaction potentialの伝達によって行われます。action potentialはNa+イオンが細胞内へ移動することで引き起こされますが、衝撃後のイオンバランスの崩れは物理的な力により、細胞膜上にあるイオンチャンネルが異常に細胞内外へのイオンの流れを許してしまうために起こると言われています。

             

異常をきたしたイオンチャンネルによりaction potentialが広がり、 これが脳震盪の一時的な症状や徴候である混乱やバランス能力の低下といった問題を引き起こします。

 

また、大量のCa2+イオンの流入はミトコンドリアの働きを阻害します。ミトコンドリアは有酸素な環境で大量にATP(エネルギー)を作り出すので、ミトコンドリアの働きが阻害されるということはエネルギーを作り出す能力が著しく損なわれるということです。衝撃後、異常なaction potentialの広がりから元のresting potentialに戻るにはATP(エネルギー)を使って細胞内外のNa+とK+の濃度を戻す必要があります。ですが、ミトコンドリアのATP生成能力が低下している場合には必要なエネルギーが十分に作り出せない(=供給できない)という事態が発生します。

 

もっともっと複雑で私も理解しきれていませんが、衝撃からのイオンバランスの崩れによって連鎖的に様々な問題が発生し、脳震盪の多様な症状や徴候を引き起こすというのが大雑把な理解になるのではないでしょうか。

 

さて、上でセカンドインパクトシンドロームについて少しだけ触れましたが、ここで少しだけ説明を加えたいと思います。セカンドインパクトシンドロームとは一度脳震盪を起こした後、その症状から回復する前に再び脳へ衝撃が加わることで、脳が急激に浮腫を起こし、致死率の非常に高い危険な状態になることです。命が助かったとしても、重篤な後遺症が残ると言われています。

 

セカンドインパクトシンドロームで後遺症を煩った人の声を聞いて、それを教訓としてスポーツに関わる色々な人に学んで欲しいなと思います。

"I could have sat out for one more game" 

"I could have sat out for a season. But now I will sit out for the rest of my life"

もうひとゲーム、もうひとシーズン欠場していたら。でも今は自分の残りの人生欠場することになった。

"Just waking up everyday and knowing I can't do all the things that I want to do"

(何が一番辛いかという問いに)毎朝起きること、それから自分がしたいことが何もできないことを知っていること。

 

              

さて、話を羽生くんに戻します。演技中、明らかにいつもよりも転倒する回数が多かったように思います。転倒した時、頭をもう一度打っていたらどうなっていたでしょう。その当時に周りにいたメディカルスタッフは二度と繰り返してはいけない判断をしたのではないでしょうか。

 

              

 

これはスポーツ界全体、それから自分自身への戒めのようにも感じます。正直、衝突があってからの最初の対応にもかなり疑問を覚えます。何もチェックせずいきなり起こそうとしたり、スケートリンクというただでさえ不安定なsurfaceで(実際起こしに来た人、つるっと滑ってる...)もっと安全性を考えた搬出の仕方はなかったのだろうかとか...。ただ、こういう状況はその場にいる人にしかその場の緊張感はわからない。自分への戒めとは、こういう状況でも冷静に判断してより良い行動ができるように普段から心掛けなければ、ということです。

 

もう大分時間が経ってしまい、関心も少し薄れてしまったかもしれないけれど、この一件が日本でもっともっと脳震盪の対応を考える教材として使われてほしいと思います。

最初の学期終了!!

随想 Emergency

昨日、3つ目の試験を終え、修士課程でのひとつ目のセメスターを終えました。とっても大変だった!でもすごく楽しかった!!

 

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勉強しなきゃいけない量も多いけれど、授業でやることがとても面白くてそこから自分で勉強したいことも多くて、なかなか忙しい日々を過ごしました。

 

勉強してたらごはんを食べ忘れたり、食べる時間がなかったりで、しばらく見たことのなかった体重まで痩せてしまったり。ワークアウトするのも走りに行くのも、余裕がなくてこの2ヶ月パタッとやめてしまって前にも増してペラッペラな身体になりました(笑)。

 

健康の分野の勉強をしてるからには、ぶくぶく太ったり、逆にガリガリに痩せたりはしたくないなと常々思ってますが、この2ヶ月はあまり自分の健康に気を遣うことができてなかったなと反省です。

 

プログラムディレクターや私の唯一のクラスメイトは毎日のように泳いだり走ったりしているようで、忙しい日々の中にもしっかりと自分の趣味や健康への時間を作ってる彼らのキャパシティーの大きさには驚きと尊敬しかないです。

 

私ももう少しメリハリのある生活をしなくては。。。

 

さて、授業ですが、本当に充実していました。前回の記事に書いた通り、このセメスターでは物理療法を正しく使うための生理学的・物理学的な理論を学ぶ授業、それからリスク管理や緊急時の評価・対応を学ぶ講義型の授業・実習型の授業の3つを履修しました。

 

実習型の授業では主に、初期評価とかそれに必要な用具とその使い方などなど学びました。一番ストレスフルだったのは3回あったシミュレーションでのトレーニング。意識レベル、呼吸、脈拍、血圧、などなどだいたい実際の場面の中で必要になる情報は遠隔からコントロールされているとてもハイテクなマネキン?を使ってシミュレーショントレーニングをしました。私が体験したのは「フットボール中の心停止」、「テニスのゲーム中の脳震盪」、「フットボール中の脊椎損傷」の3つケース。

 

もちろん、事前にシミュレーションの課題が何かは伝えられていません。「フットボール中の脊椎損傷」のケースは、その現場に行く直前に「フットボール中に衝突があって選手が倒れた」「受傷機転は脊椎への軸圧だった」とだけ伝えられました。(これだけ言われたら、学んだ内容から先生がテストしたいのは脊椎損傷だなと察することはできましたが...)

 

流れとしては、頸椎の損傷が疑われると判断した時点で頭を固定して、救急車を呼ぶように指示。脊椎を動かさないようにヘルメットやショルダーパッドを外し、スパインボードに固定する、という感じです。博士課程の方々が手伝ってくれますが、私がボスで私が指示をしなければならないという設定です。

 

1回目のシミュレーションでは、patientに意識があったのに、これから何するのか何も伝えずにただ、精一杯4人の仲間に指示をしていました。先生にフィードバックをもらって初めて、「あ、そうだった、あの人意識あったわ。。。首が痛いって話しかけてきたわ。。。」と気付きました。

 

2回目、「C-spineの怪我をしてるかもしれないから、これからequipment外して、スパインボードに固定します。」とpatientに説明。おそらくこれが遠隔操作している人にスイッチを入れたようで、「C-spineの怪我って何?重傷?」とか、私がヘルメット外すために仲間の一人にスクリュードライバー持ってくるように頼むと「スクリュードライバー何に使うの?」とか次々に話しかけてくる。。。

 

私は仲間にequip removalとスパインボードの指示をするので精一杯で、patientには「大丈夫!」とかしか言わないで、半ば無視するように強行突破(笑)。全然駄目!

 

その他にも、頸椎損傷を疑う過程で丁寧に、意識、neurological involvement、首の痛み、頸椎の変形全部チェックしたけれど、軸圧の衝突で首が痛いと訴えられたら、頸椎変形だけチェックして救急車呼んだ方が良かったんじゃないかな、とか。明らかにハイリスクなときは少しでもpatientが自分で首を動かしてしまいそうなこと(「手足の指先動かせる?」とか「(皮膚に触れながら)これ触られてるの感じる?」とか)は省くべきだったなと。

 

まぁ、そんなこんなでシミュレーショントレーニングは本当にストレスフルでした。でも、少なくともシミュレーションでトレーニングをした心停止や脳震盪、頸椎損傷に対する恐れは少し和らぎました。

 

日本でもCPR/AEDのトレーニングはしたけれど、すでに呼吸も心臓も止まっている患者さん(マネキン)を相手にすることが普通でした。『苦しそうに呼吸をしていたところからだんだん呼吸も心臓も止まっていく』とか、『AEDの後に脈が戻ってきたけど呼吸はまだない』とか起こりうるありとあらゆる状況に慌てないために、こうやってハイテクな機材でシミュレーショントレーニングをさせてもらえるのは本当にありがたいなと思います。

 

日本の大学での学生トレーナー時代、ほぼ一人で部活をカバーしていた私が一番恐れていたことは紛れもなく、誰かが部活中に命を落としてしまうことです。どんなに効率の良いリハビリができても、良いケアができても、防ぐことができる死を防げなかったら何の意味もないという想いが強くあります。このセメスターではシミュレーショントレーニングに加えて、スポーツ中の突然死に繋がる可能性のある怪我や病気を一通り学んで、自分の中で強く不安に思っていた部分が勉強によって少し自信に変わった感覚があります。

 

自信に変わったといっても、まだ実践を積んだ訳でもなく、私が現場で使いものになるかということはこれからの課題ですが、出発点を振り返ると確実に成長できたと思います。

 

スポーツ中の突然死に至る可能性がある怪我や病気は起こる前に防ぐことが何よりも重要です。これらのpathologyを学ぶ中で、大学学部時代、どのようなリスク管理のプランを持っておくべきだったのか、どんなことを事前に監督や選手に話しておくべきだったのか、クリアになった部分が大きいです。

 

私はあまり融通の利くタイプではないので、目標を固定しすぎないように気をつけていますが、アメリカでやりきったと思うまで学んだら、日本の教育現場で学んだことを生かしたいという気持ちだけは前から変わらずあります。このセメスターで学んだことはとても重要でありながら日本では教育現場でもスポーツ現場でも大きく欠いている内容であるように思います。確実に私が日本に持ち帰りたい内容のひとつになりました。

 

明日からはいよいよフットボールでの実習が始まります。授業は秋学期が始まるまで3週間お休みなので、その間にこのセメスターで学んだことをできる限りブログにまとめられたらと思っています!

 

初めての大学院生活

随想

4月の終わりに書き始めた記事があったのですが、日本への一時帰国や、帰国後の時差ボケ・歯痛事件でブログを書く手も止まっていました。6月6日からは待ちに待った大学院の授業も始まり、あと1週間ほどで1ヶ月経ちます。夏のセメスターは7月いっぱいで終わるので、このセメスター、半分は終わったことになります。

 

さて、今日は特に何について書くでもなく、ただこの激動の1ヶ月を振り返って、今の心境を書き残しておくことができたらいいかなと思っています。いつもに増して自己満足な記事になりますが、気が向いたら読んでみてください。

 

今学期は、物理療法を正しく使うための生理学的・物理学的な理論を学ぶ授業、それからリスク管理や緊急時の評価・対応を学ぶ講義型の授業・実習型の授業の3つの授業を取っています。月曜日から木曜日まで毎日同じ授業なので、とにかく進度が速い。読み物の量も多いし、課題も多い。ブログ書いているけど、今週までの課題がまだ3つ残っていて、明日には試験も控えています。ちょっと現実逃避したくて書いています。

 

私、物事を計画的に進めるのは結構得意で、日本の大学時代も睡眠時間を削って課題を終わらせたり、試験勉強をしたことってなかったと思うんです。直前まで部活を毎日やっていたけれど、卒論もそこまで焦らずに提出できたし。でも、この計画性って私の不安定性に由来しているのは明らかで、今私はこの自分の性質と要求される能力との間で葛藤しているのをとても感じます。

 

今までは、だいたいプレゼンテーションがあれば1ヶ月前から準備を始めていたし、レポートの課題があれば2週間前には始めて、1週間前には書き上げてライティングセンターで文法や引用の間違いがないか最終チェックしてもらって提出する、という流れを確立していました。完璧主義で石橋を叩きまくって渡るような行動を取っていました。

 

でも、今はひとつの課題にこんなに時間がかけられないほどたくさんの課題が毎週あって、課題の掲載から提出までの期間も1週間か2週間そこら。今までの自分の処理能力では全然対処できない量があって、「これ、まだ完璧じゃないな...」と思いながら提出したものもすでにいくつかあります。

 

試験の形式もこれに似ている気がします。時間が足りない。今までは終わってから何度も見直ししてたけど、終わらせるので精一杯。提出してから答えを見て、ちゃんとゆっくり読めば分かった問題を間違えてガックリ...

 

今までは、「人より時間がかかるけれど、その分徹底的で思慮深いものを作ることができる」「自分の課題に厭わずたくさんの時間をかけることができる」というところが私の強みだと思っていた、というか今でも思っているけれど、それとは別に「素早く適切な判断をする」という、自分がとても劣っていると感じている能力を試されているような気がします。

 

アスレティックトレーナーは状況判断にたくさんの時間をかけてはいられない、緊迫した状況にもたくさん立ち会う職業。これも乗り越えて、身につけなければならない能力だなとつくづく感じます。また、私が時に必要以上に完璧にこだわるのも、私自身、咄嗟の状況判断や柔軟に対応することが苦手なことを認識していて、できるかぎりの準備をしてあらかじめ知識でガチガチに固めておきたいと思うからです。準備すること自体には問題はないと思うけれど、想定外のことが起きたときに柔軟に対応できないのは大きな問題です。

 

まずは完璧でなくても自分のことを許せるようにならないと、チャレンジすることすらやめてしまいそうなので、失敗してもそれだけは自分に言い聞かせていきたいなと思います。

 

また、成績にこだわりすぎないようにしないと、とも思います。今まで、どうしても大学院に入りたくて絶対にAしか取らないという気持ちでいました。学部の授業は私もしっかり時間をかけてやってきたこともあって、それも守り続けることができましたが、自分の苦手なことばっかりだったこの大学院での一ヶ月、点数を失っては必要以上にヘコむことを何度も繰り返してしまいました。大事なことは「学んでいるか・前進しているか」なのに、そのプロセスでの失敗にその日の気分が左右されるほど落ち込んでしまったりしました。

 

もっともっと学ぶことを楽しみたい。大切ではないことに捕われて、大切なことを逃さないように、もっと自分の感情を説得できるようになりたい。暴れまくる感情をしっかり収めて自分が必要だと思う方向へ全身合意の下で進めるようになったら私も少しは成長したと思えるのかなと思います。

 

ここまで少しネガティブとも取れるような文章を書いてしまいましたが、実際にはすごくポジティブで、自分の苦手なことにチャレンジできる環境にとても感謝しています(最初の1ヶ月で少し疲れているのは間違いないけれど...)。教授やクラスメイトにも本当に恵まれて、この環境がまさに私が欲しかったものだと確信をもって言いきることができます。

 

半年後、1年後、そして卒業する2年後、私がどんな変化をしているのか楽しみでもあり、今の気持ちを書き残してみました。

 

 

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水分補給を学ぶ

Heat Illnesses Hydration Nutrition

何よりもまず最初に。

熊本を中心に九州で被災された方々、また九州に大切な人がいる方々に一刻も早く心休まる時間が訪れるようアメリカからも祈っています。

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今回は水分補給を勉強してみましたが、まとめる前にちょっと宣伝をさせていただきます。アメリカで出会ったATCの山中徹雄さんが江ノ島のすぐ近くでパーソナルトレーニングジム「Golf and Training Plaza A+」を開きます!

 

パーソナルトレーナーって人々を一対一でムッキムキにするイメージがあって、スポーツ傷害の予防・評価・リハビリなどが専門のATCがパーソナルトレーニングをやるのには正直、最初は少し疑問がありました。

 

でもコンセプトを聞くと、必ずしも身体をムッキムキにすることが目的ではなく、もっと広く「多くの人を健康にしたい」という思いが根底にあることがわかりました。そしてその手段として、ATCとして培った知識や経験を生かそうとしているのだということも。

 

アスリートのみに還元されていた知識や技術がこうやって広く出回ろうとしていることに対して私はとても嬉しく思います!興味がある方は是非、上に貼付けたウェブサイトを見てみてください。

 

また、ATCになるための留学やアメリカのスポーツに興味のある学生も気軽に連絡を取ってみて大丈夫だと思います。アメリカに来てみてわかりましたが、言葉やビザのハンデがある中で仕事を勝ち取っている日本人って本当にすごいなと思います。NFLや野球のメジャーリーグでの経験もあり、何年間もアメリカで働いていた方なので、仕事人としても何か学べることがあるかもしれないです。

 

さて、本題に入ります。

水分補給、みなさんはどんなことに気をつけているのでしょうか?私は恥ずかしながら日本での大学時代、慣習に従うのみで従来の水分補給に対して何も疑問を持たずに過ごしていました。学生といえども危機管理が欠けていたなと思います。

 

このトピック関連で思い出すことは大学4年生のときの夏休みの練習。普段バレーボール部が練習している体育館で工事があり、その夏はいつもと違う体育館で練習することになったのですが、そこが本当に暑さのこもる体育館で、体調が悪くなる子、練習中・後に脚がつる子が過去に増して多かった記憶があります。

 

パフォーマンスも全然高くありませんでした。何かの講習会か授業かでしばらくチームを離れていたキャプテンが戻ってきたとき「みんなが下手になってる、何してたんだ!」って言われたのもよく覚えています (笑) 。確かに選手の集中力が散漫になっているのを私も感じていたし、それを問題にも思っていました。

 

「暑いとか関係ない。それでも集中して練習しろ。」というのは多くの指導者やキャプテンなどのリーダーの想いだと思います。私もスポーツをやっていた人間としてその気持ちはとてもよく理解できます。でも、これから練習環境を整える側の人間になる者としては、集中できない選手に「集中しろ」というのではなく、少しでも選手が集中できない要因を取り除くよう働かねばと思います。

 

このトピックについてまとめる中で、暑さに対して私がどういう先手を取っておくべきだったのかを考え直そうと思います。暑さへの対策は水分補給だけではありませんが、今回はまず水分補給に限定して話を進めさせていただきます。

 

今回のまとめ方は、National Athletic Trainers' Association Position Statement: Fluid Replacement for Athletes (2000) で述べられていることの中からさらに注目したいことをピックアップしてそれらについて少し詳しく説明する、という方法を取りたいと思います。

 

まず第一に、水分補給のプロトコルはアスリートのsweat rate練習・試合中の水分休憩の在り方気温・湿度などの環境要因暑熱順化の状況運動の継続時間・強度アスリートのパフォーマンスなどを考慮した上で決定されるべきだと言われています。

 

この中で『sweat rate』ってあまり聞き慣れない言葉ではないでしょうか。Sweat rateとは、運動中どのくらいの早さで水分が汗として身体から失われるか、ということを示す数字です。水分補給の基本的な考えは「汗や尿として身体から出ていった水分を補う」というものであるので、このsweat rateはどのくらいの量の水分を摂取すればいいのかという目安を知るために使われます。

 

Sweat rateの算出法を私が尊敬する先輩が所属するKorey Stringer Instituteのウィブサイトから紹介します。

http://ksi.uconn.edu/wp-content/uploads/sites/1222/2015/04/Sweat-Rate-Calculator.pdf

 

手順は以下のとおり。

1) 汗をかき始めるところまでウォーミングアップをします。

2) 正確な体重計で体重を測ります。

 * この際裸で測るのが一番好ましいです。

3) 一定時間、練習を行います (30分や1時間だと計算しやすい) 。 

 * この練習の間の水分補給ではどれだけの量を摂取したかをわかるようにします。

 * この練習の間は排尿は行えません (体重を測る前に!) 。

4) 練習終了後、再び同じ体重計・同じ格好で体重を測ります。

 

そして今度は計測したデータを以下のようにまとめます。

A: 練習前の体重 __ kg

B: 練習後の体重 __ kg

C: 練習後の体重の変化 __ (A - B) g

D: 練習中摂取した水分量 __ mL

E: 汗として失った水分量 __ (C + D) mL

F: 練習の継続時間 __ 分 または 時間

G: Sweat Rate __ (E / F) mL/分 または mL/時 

 

先述したようにこのsweat rateはどのくらいのペースで水分が失われるか、つまりどのくらいのペースで水分を補給する必要があるのかを表します。なぜ水分摂取の理想的な量を一般化してそれを推奨するよりも、各個人のsweat rateの算出が推奨されるかというと、sweat rateは個人差が大きいからです。このposition statementの中では平均のsweat rateは0.5 L/時から2.5 L/時までの差があったと書かれています。

 

Sweat rateが0.5 L/時のアスリートにとっては1時間に500mLの水分摂取で良いのに対して、sweat rateが2.5 L/時のアスリートが1時間に500mLしか水分摂取をしないと、必要な量の5分の1しか補充できていないことになります。

 

また、個人内でも環境の変化によって摂取しなければいけない水分の量は変わります。「発汗」は私たちの身体が持つ身体を冷やすための機能です。私たちの身体は本当にうまくできていて、暑さにさらされ続けると、より効率的に身体を冷やすためにより多くの汗をかくように順化します。つまり、当然のことと言えば当然のことですが、暑くなればたくさん汗をかくようになり、その分、より多くの量の水分を摂取することが必要になるということです。特に暑さへの順化の前と後ではsweat rateは異なり、これもまた、一般的な水分摂取の目安に従うよりも水分摂取の量を各個人のsweat rateに基づいて決めることが推奨される所以です。

 

適切な水分補給の基準を選手に理解させ、モニタリングするという役割はもちろんアスレティックトレーナー(またはその他の指導者)が担っていると思いますが、実際に「水分を摂る」という行動を取るのはアスリートです。ですから、アスリート自身が「適切な量の水分を補給できているか」ということに敏感になる必要があります。

 

まずは大まかにでも自分専用のボトルで練習中どれほど水分を摂っているか、それから練習前後でどのくらい体重が減っているかを測ってみて、現在の水分補給を知ることから始めてみてください。練習前後の体重の変化の基準としては、体重の減少は練習前の体重の2%以内に抑えられるべきだと言われています。 

 

さて、ここまで当然のように水分補給が重要であるという前提のもと話を進めてきましたが、なぜ重要なのでしょうか。もちろん熱中症を防ぐ上で水分補給がとても重要なのは誰もが知っている事実かと思いますが、熱中症が起きなければ水分摂取を見直す必要はないでしょうか。

 

熱中症が起きていない状況だとしても水分摂取を見つめ直す必要はあります。それは水分摂取とパフォーマンスが大きく関係しているからです。これはこの先、私が選手と関わる際には必ず強調しようと思うポイントです。というのも、選手は自分のパフォーマンスには責任を持つべきだと思うからです。自身のパフォーマンスを高める・高く維持するために積極的に適切な水分摂取を実践して欲しいという想いがあります。

 

では実際には不適切な水分摂取がどのようにパフォーマンスを低下させるかを説明していきたいと思います。

 

脱水から引き起こされるパフォーマンス低下は主に有酸素系、つまり持久系の能力の低下によるものです。有酸素系のエネルギーシステムは前の記事で紹介した通り、細胞のミトコンドリア内で酸素が水素と化合する際にATPが作られるシステムです。

 

たくさんのエネルギーが必要なときには、たくさんの酸素が必要になります。そこで肺では呼吸の深さや頻度を上げて酸素を多く取り込み、心臓では心拍数 (heart rate: 一分間に心臓が収縮する回数) や一回拍出量 (stroke volume: 心臓の一回の収縮で送り出される血液の量) を上げて身体にたくさんの酸素を送る、という変化が起きます。これはキツい運動をしているときに息が上がって心臓がバクバクしているところを思い出せば簡単にどういうことか理解できると思います。

 

有酸素系の能力に関連する肺と心臓のうち、脱水によって大きく影響を受けるのは心臓、というか心臓血管系 (cardiovascular) の機能です。

 

運動中にどれだけたくさんの酸素 (=酸素を含んだ血液) を筋に送り続けられるか、ということは持久系の能力を決定する大事な要素のひとつです。一分間にどれだけの量の血液が心臓から送り出されたかということを「心拍出量 (cardiac output) 」という言葉で表しますが、持久系のトレーニングを積んだアスリートの運動時のcardiac outputは最大で35 L/分 にもなると言われています。トレーニングを積んでいない人は22 L/分 程度と言われており、ここから持久系の運動に『血液をたくさん送り出す能力』がどれだけ大きく関係しているかを見て取ってもらえたらと思います。

 

Cardiac outputは、heart rateとstroke volumeのかけ算で求めることができます。

つまり、Cardiac Output = Stroke Volume x Heart Rate 。

      

 

脱水状況では何が起きるかというと、このcardiac outputを決定する2つの要素のうち、stroke volumeが減少します。汗は身体を巡る血液から来ているので、汗をたくさんかいたのにも関わらずそれが補充されていない状況では血液の量自体が減ってしまってい、そのことがstroke volumeの減少のひとつの理由になっているようです。

 

このstroke volumeの減少はheart rateの増加によってカバーされ、cardiac outputの極端な減少は防がれますが、脱水に加えて『高体温』という条件が加わるとheart rateの上昇を以てもcardiac outputの維持ができなかったという研究結果があります (Gonzalez-Alonso, Mora-Rodriguez, Below, & Coyle, 1997) 。

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右下のグラフにしか項目がラベルしてありませんが、全部同じ項目で左からHyper、Dehy/Hyper、Dehy、Dehy+BVRです。

 Hyper: Hyoperthermia (高体温)

 Dehy/Hyper: Hyperthermia + Dehydration (高体温 + 脱水)

 Dehy: Dehydration: Dehydration (脱水)

 Dehy+BVR: Dehydration + Blood Volume Restoration (脱水 + 点滴で血液量を回復)

 

ここでの『dehydration』は4%程度の体重のロス、『hyperthermia』は食道の温度が39.3℃程度とされていて、hyperthermiaは室温35℃・湿度50%の環境で72%VO2maxの強度で運動することで達成されています。

 

脱水だけ、または高体温だけ、という状況ではstroke volumeの減少はheart rateの増加によりカバーされている (コントロールと比べてcardiac outputに有意な差はない) けれど、この2つの条件が重なってしまうと相乗効果的に働きcardiac outputの減少は一気に顕著になります。

 

* 実験では室温や水分摂取の量を調整することでこの2つの条件(脱水・高体温)を別々に達成していますが、そもそも特に夏場、この2つの条件は切り離されるものではありません。

 

Cardiac outputは先に述べた通り、有酸素系の能力を決定する重要な要素です。Cardiac outputが減少し、有酸素系のエネルギー供給システムの効率が下がると、運動の強度を落とすか、試合などで強度が落とせない (全力でやることが求められる) 場合には、無酸素系のエネルギー供給システムがより大きな割合で動員されることになります。

 

無酸素系のglycolysisはエネルギー供給に加勢はするものの、特性上、有酸素系のエネルギーシステムのように長く持続することはできません。また、anaerobic glycolysisでは最終生成物として乳酸が作られますが、有酸素系の能力が低下している状況では乳酸の除去も効率が下がってしまいます。

 

つまり、cardiac outputを高く維持できている場合に比べて、いずれにせよ早いタイミングで強度を落とさざるを得ない状況になってしまうのです。私が大学4年生の夏休みに経験したバレーボールの練習もこの状況だったのではないかと思います。『持久系の運動』と言いましたが、大体練習は2-3時間、合宿だと倍以上あるものです。この間、パフォーマンスが上がらないと、何も知らなければ『だらけている』というふうに見えてしまうのかもしれません。

さて、先ほど引用した研究での脱水 (dehydration) の程度は体重の4%のロスでしたが、これは結構大きな数字です。例えば、練習前の体重が50.0kgだったとして、練習後に48.0kgになっているということです。水分を2.0kgも失えばパフォーマンスが下がるのも納得ですが、それより程度の低い、例えば1%のロスではパフォーマンスへの影響はどうでしょうか。

 

5kmのヒルクライミングサイクリングのタイムをパフォーマンスの指標に、体重1%のdehydrationとeuhydration (適切な水分が保たれている状態) の2つの状況を比べた研究がありましたが、被験者10人全員がeuhydratedの状況下でより良いパフォーマンスを達成しました (Bardis, Kavouras, Arnaoutis, Panagiotakos, & Sidossis, 2013) 。タイムはduhydratedの方が平均で57.8秒速かったという結果でした。

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NATAのPosition Statementでは水分のロスは体重の2%以下で抑えるようにと書いてありますが、1%のロスでさえこのようにパフォーマンスは下がってしまうという報告があるのです。

 

また、脱水は運動からのリカバリーにも影響を及ぼします。

下のグラフは4kmのランニングコースを3周したときのheart rateとcore temperatureの変化をhydrated・dehydratedの条件別に示しています (Casa et al., 2010) 。

 

Aはレースのように12kmを全力で走った時の変化、そしてBは全力ではないペースでhydrated/dehydratedの2回を同じペースで走った時の変化です。                              

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ここではBに注目してもらいたいと思います。同じペースで走ったにも関わらずheart rate、core temperature共に走り終わった10分後、20分後までdehydratedの条件で走った時の方が高かったという結果でした。また、heart rateやcore temperatureのような客観的なデータだけでなく、のどの渇きや主観的な暑さ・キツさなど被験者の知覚においても同様にdehydratedの条件が不利であったことが記録されています。

 

次は水分補給の内容に触れてみたいと思います。

NATAのPosition Statementでは運動が45-50分以上続く場合や強度が高い場合には、飲み物に炭水化物が含まれていた方が良いと述べられています。

 

カーボローディングの記事で運動中の炭水化物の働きについては説明しましたが、炭水化物は強度の高い運動を支える大切な燃料です。酸素を身体に取り込むことでエネルギーを作り続けることができる有酸素系のエネルギーシステムとは違って、炭水化物を燃料にエネルギーを作るglycolysis (解糖系) は身体の中の炭水化物が枯渇してしまうとエネルギーを作り続けることができなくなってしまいます。だから、長く続く練習や試合、強度の高い運動の際には炭水化物を含んだ飲み物の方が良いという訳です。また、先ほど触れたように、脱水や高体温で有酸素系の能力が低下している場合にはglycolysisへの依存度も高くなるので炭水化物の枯渇が早い段階で起きることも予想されます。

 

でも、炭水化物の濃度は高ければ良いのかというとそういう訳でもなくて、濃度が8%を越えると、水分の吸収を制限してしまうようです。そのため炭水化物の濃度は4 - 8 %が適切とされています。

 

また、夏の水分補給と言えば「塩分」とセットで思い出されるかと思います。これは汗に溶けて塩の成分であるナトリウムが失われてしまうからです。調べてみて意外に思いましたが、夏の水分補給では塩分が強調される割に、実際には少しの量でも十分に失った分の補充はできるようです。

 

Low-sodium carbohydrate drink (ナトリウム濃度: 19.9 mmol/L) とhigh-sodium carbohydrate drink (36.2 mmol/L) を比べた研究では4時間の運動中に保持できたplasma volumeとserum sodiumには有意な差はありませんでした (Anastasiou et al., 2009) 。

 

* sodium = ナトリウム

* carbohydrate = 炭水化物

 

Position Statement中ではナトリウムの濃度は0.3 - 0.7 g/Lが適切とされています。上の研究はmmol/Lで濃度を示しているので、これをg/Lに変えると、19.9 mmolは0.456 g/L*、36.2 mmol/Lは0.832 g/L*。推奨される濃度とこの研究の結果も相反するものではありませんでした。

 * ナトリウムの1モルの重さは22.99 gなので

 19.9 mmol/L x 1 mol/1000 mmol x 22.99 g/1 mol = 0.456 g/L 

 36.2 mmol/L x 1 mol/1000 mmol x 22.99 g/1 mol = 0.832 g/L 

 

この情報を元に一般的なスポーツドリンクの炭水化物・ナトリウムの濃度を見てみたところ、以下の通りでした。

○カリ○エット

 炭水化物: 6.2 g/100 mL = 6.2 %

 ナトリウム: 49 mg/100 mL = 0.49 g/L

○クエ○アス

 炭水化物: 4.7 g/100 mL = 4.7 %

 ナトリウム: 40 mg/100 mL = 0.40 g/L

 

どちらも推奨される範囲内でした。練習時間が長い場合や一日に何度も試合がある場合には失われた水分をスポーツドリンクで補うのは、体内の水分量を一定に保つのにはもちろん、エネルギー補給やナトリウムの補充にも効果的なのではないかなと思います。

 

でも、これらはあくまで補充的な役割であることを忘れてはいけません。栄養摂取の基本は食事だということです。カーボローディングの記事を書いたときにも、グリコーゲン(体内に貯蔵できる炭水化物)の値は炭水化物を十分に含んだ食事によりしっかり回復することを学びました。ナトリウムに関しても、現代の食事情では不足する方が難しいのではないかと思います。

 

食事を抜いたりせず、しっかりと食事を整えることで、まずは運動をできる身体を作ることが、栄養面では第一の熱中症・低パフォーマンス対策なのではないでしょうか。

 

 

さて、今回は水分補給の目安の量を知るというところから始まり、パフォーマンスへの影響、飲み物の内容、とまとめてみました。Position Statementから搔い摘んで説明する、ということで始めましたが実際に勉強できたこと、触れられたことはとても少なく感じますし、もっと勉強しなければと思います。

 

論文の読み方・情報の捉え方もまだまだ一人前でないなと感じます。もし、みなさんの解釈と違う部分があれば教えてください!そこから学べたらとても嬉しいです。

 

私の大好きな大学バレーのリーグもいよいよ始まりました。暑いけれど(日本はまだ暑くない?)、適切な水分補給と、適切な食事で闘える身体の基本を作って、これまでやってきたことを十分に発揮してくれたらと思います。男女とも断然早稲田バレー部ファンです。頑張れー!

 

 

 

参考文献

Anastasiou, C. A., Kavouras, S. S., Arnaoutis, G., Gioxari, A., Kollia, M., Botoula, E., & Sidossis, L. S. (2009). Sodium Replacement and Plasma Sodium Drop During Exercise in the Heat When Fluid Intake Matches Fluid Loss. Journal Of Athletic Training (National Athletic Trainers' Association), 44(2), 117-123.

Bardis, C. N., Kavouras, S. K., Arnaoutis, G., Panagiotakos, D. B., & Sidossis, L. S. (2013). Mild Dehydration and Cycling Performance During 5-Kilometer Hill Climbing. Journal Of Athletic Training (Allen Press), 48(6), 741-747.

Casa, D., Armstrong, L., Hillman, S., Montain, S., Reiff, R., Rich, B. Loberts, W., & Stone, J. (2000). National Athletic Trainers' Association position statement: fluid replacement for athletes. Journal Of Athletic Training (National Athletic Trainers' Association), 35(2), 212-224.

Casa, D. D., Stearns, R. L., Lopez, R. M., Ganio, M. S., McDermott, B. P., Yeargin, S. W., & ... Maresh, C. M. (2010). Influence of Hydration on Physiological Function and Performance During Trail Running in the Heat. Journal Of Athletic Training (National Athletic Trainers' Association), 45(2), 147-156.

Gonzalez-Alonso, J., Mora-Rodriguez, R., Below, P., & Coyle, E. (1997). Dehydration markedly impairs cardiovascular function in hyperthermic endurance athletes during exercise. Journal Of Applied Physiology, 82(4), 1229-1236. 

 

 

 

FASCIAって何者?

Fascia Treatment

色々と書き始める前に。

ついについに大学院の合格通知をいただきました!第一志望のIndiana State Universityです。色々な方にお世話になってやっと掴んだ、というか与えてもらった大事な大事なチャンスです。

 

頑張らなきゃな、と身が引き締まるとともに、ワクワクが身体から溢れ出すくらいエネルギーがみなぎっています!学べることはとことん学び尽くそうと思います。

 

さて、今回はfasciaについてまとめたいと思います。正直fasciaは日本語で何なのかわかりません。「筋膜」と呼ばれることが多いと思いますが、それは英語で言うmyofasciaではないかなと思ったり。調べていくと、fasciaは必ずしも筋に付随するものではないこともわかりました。だから単純に「筋膜」と訳していいのかもわからないので、このブログでは「筋膜」ではなく「fascia」と書こうと思います。

 

※ 先に書かせてもらいますが、ちょっとグロい映像を載せているので、手術の映像などが苦手な人はここから先に進まないほうが良いと思われます。

 

最近では(随分前から?)フォームローラーやストレッチポールなどfasciaをターゲットにしたケア用品がたくさんあり、私自身も日本での学生トレーナー時代から選手にはこれらを使ってセルフケアをするように促してきました。

 

でも正直、fasciaのことをよく理解しているかと言ったらNoです。日本でもアメリカでも解剖学の授業などではさらっと触れる程度で、基本の知識はあまり持っていないのにストレッチポールやテニスボールを使っての筋膜リリースなど、応用の仕方に関しては自分の周りに情報が溢れているように感じました。

 

アメリカではグラストンやテクニカ・ガビラン、日本では鍼などfasciaにアプローチする治療法もたくさんあります。私がお付き合いしているATCの山中氏がガビランを重宝しているのもよく聞いていて、私もそういう技術をひとつのツールとして持ちたいなという願望もあります。

 

セルフケアにしても上で紹介したような技術にしても、やはり効果を最大にするためにはもう少しよく知る必要があると思うので調べたことをまとめて見ようと思います。

 

まずfasciaとは。

比較的新しい論文でもはっきりと定義されていないことが多い印象ですが、共通していることは身体のパーツを束ねるconnective tissueだということでしょうか。

 

これを一端fasciaの定義とすると、この定義に当てはまるものは身体の中に山ほどあります。例えば、靭帯、腱、支帯、筋内膜 (endomysium) 、筋周膜 (perimysium) 、筋外膜 (epimysium) 、関節包、髄膜などなど。

 

これらのconnective tissueは主にコラーゲンで構成されますが、それぞれの違いはコラーゲンの種類や密度、アレンジメントにあるようです (Kwong & Findley, 2014) 。

 

似通った構成をしているとは言っても機能は様々で一概に「fascia」として括るのは難しいですが、「fascia system」として大きくカテゴライズすることは理解する上で役立つかもしれません (Kwong & Findley, 2014) 。

 

スポーツや治療の現場でよく扱われるfasciaをいくつか見ていきたいと思います。

 

まずはsuperficial fasciaとdeep fascia。Superficial fasciaは皮膚、皮下脂肪と一体になっているfasciaで、deep fasciaは筋のグループを束ねるfasciaです (Kwong & Findley, 2014) 。人差し指を(どこでも良いけど例えば)反対側の腕に押し当てて動かしてみると皮膚が動きますよね。この動きは筋と皮膚の間で起きていて、これを可能にしているのがsuperficial fasciaとdeep fasciaと思って良いと思います。Superficial fasciaは皮膚側、deep fasciaは筋側にくっついてこの2つのfasciaがスライドが起こるsurfaceになっているようです。

 

次はendomysium、perimysium、epimysium。EpimysiumをDeep fasciaと表記するケースも何度か見ましたが、場所によってそういう場合もある、ということなのかなと思います。Endomysiumは筋線維を包むfascia、perimysiumは筋線維束を包むfascia、そしてepimysiumは筋全体を包むfasciaです。

 

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人体を使ってsuperficial fasciaとdeep fasciaを説明している映像があったので載せてみました。この映像で気分を悪くしてしまったらごめんなさい。

 

   

 

上でsuperficial fasciaとdeep fasciaの間でスライドが起きると書きましたが、多くのfasciaが同じように組織間の潤滑剤として働きます。例えばdeep fasciaとepimysiumの間、それからepimysium間でも同じようにスライドが起き、それにより筋のグループがひとつのfasciaで包括されながらも構成するそれぞれの筋が単独の筋としても機能するようになっています。

 

このfascia間のスライドは非常に重要で、このスライドが円滑に行われなくなると筋の動きに影響がでるのはもちろん、痛みをも引き起こします (Stecco, Gesi, Stecco, & Stern, 2013) 。世に出回っているfasciaへのアプローチのほとんどがこの円滑なスライドを再獲得するための手技なのではないかなとも思います。

 

下にfasciaの映像を貼りました。Fasciaってこんな感じらしいですよ!立体的に枝分かれした、水分をたっぷり含む繊維が柔軟に動くことでスライドが可能になっているようです。

   

 

この動画の6分頃と18分頃を見てもらうと、立体的なfasciaの繊維の構成が、スライドを生み出すのにいかに有効な形かがわかると思います。

   

 

Connective tissueって恥ずかしながらあまり理解をしていなかったのですが、今回fasciaについて調べていく中で少し理解が深まったように思います。Connective tissueは構成する細胞そのものよりも、その細胞が作り出す細胞外の繊維(例えばコラーゲンとか)がそのtissueを形づくっていて、その繊維の違いがtissueの構造や機能の違いになるようです。上の動画で見ているネットのような構造の大部分は細胞外の繊維で、これはextracellular matrixと呼ばれます。

 

この動画はconnective tissueのタイプを説明しています。Fasciaに限っている訳ではない、というかむしろこの動画でもfasciaには注目されていませんが、connective tissueのタイプを知るのにはとても良いなと思ったので貼ってみました。

           

 

この2つの動画はextracellular matrixについて説明しています。2つ見ると30分かかってしまうので興味があれば時間のあるときに見てみてください。

           

           

 

いわゆる"fascia"(靭帯や健ではなく)のexrtacullular matrixには、ヒアルロン酸が多く含まれていて、これがfasciaのスライドに一役かっているようです (Roman, Chaudhry, Bukiet, Stecco, & Findley, 2013) 。「ヒアルロン酸」と聞くとトロトロとした液体を思い浮かべますよね。これが潤滑剤となっているのも納得できます。

 

Fasciaの動きの悪さ(スライドのしにくさ)が身体の動きを悪くしたり痛みを引き起こしたりすると書きました。ヒアルロン酸は乳酸などの影響でpHが下がったり、あとは単純に温度が下がったりすると、粘度が増し、お互いにくっつき合いfascia間でのスライドのしやすさが低下してしまいます (Steccoet al., 2013) 。

 

もちろん私たちの身体は下がってしまったpHをもとに戻すシステムを兼ね備えていますし、pHが元の値に戻るとともに基本的にはヒアルロン酸の粘度も元に戻っていきます (Steccoet al., 2013) 。

 

ですが、ヒアルロン酸の粘度が完全に回復しにくい場所もあるようで、粘度が回復されずにくっついたままになっている部分がrestrictionとなり、トリガーポイントと呼ばれる痛みにとても敏感な場所として認識されるようになるのではないかということも言われています (Steccoet al., 2013) 。

 

ヒアルロン酸の粘度を下げることが健全なスライドを取り戻すのにはとても重要です。温度を上げる(温める)ことも有効ですが、これはくっついてしまったヒアルロン酸の構造には何もアプローチをしていないので、効果は一時的で温度が下がるとまた粘度は増し、動きにくさや痛みも出てきてしまいます。

 

くっつき合って大きくなってしまったヒアルロン酸の構造を壊すのに何が有効かというと、物理的なストレスが良いようです (Steccoet al., 2013) 。圧迫や摩擦などの刺激はヒアルロン酸を小さくします。このとき、炎症のような反応が起こり、それが適切な数や大きさのヒアルロン酸を回復するのに重要なのではないかと予想されています (Steccoet al., 2013) 。

 

これがフォームローラーやグラストン・ガビランのような道具がrestrictionを解放する手段としてよく使われる理由だと思います。

 

どのような機械的な刺激が一番ヒアルロン酸の動きを促すかということを数学的に検証した研究がありました。数学ができなすぎて一体何を計算しているのか全く理解できなかったけれど、結論ではグラストンやガビランのような道具を使うと、人間の手でマッサージするよりもかなり小さな面積に大きなプレッシャーを加えることができるので、周囲のプレッシャーとの差によってより多くのヒアルロン酸の流れを生み出すことができ、これらの道具を併用する方がマッサージのみよりも有効だということが言われていました (Roman et al., 2013) 。 

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さて、ここまでfasciaのスライドのことについて書いてきましたが、「痛み」についても少しまとめてみたいと思います。痛みを「痛み」として知覚するプロセスにおいては、神経がとても重要な役割を担っています。

 

どのような種類の刺激が、どのような種類の痛みで、どれくらいの強さの痛みとして知覚されるか、ということは、どのような神経・受容器がどのくらいの密度でそのtissueをinnervateしているかに拠るかと思います。

 

Fasciaの痛みってどのようなものだと思いますか?

私が読んだ研究はthoracolumbar fasciaという腰の部分にある何層にも重なったかなり大きなfasciaを対象にしたものでしたが、このfasciaの痛みへのsensitivityは、筋よりも皮下組織よりも高かったのです (Schilder, Hoheisel, Magerl, Benrath, Klein, & Treede, 2014) 。つまり、thoracolumbar fasciaが一番痛みを感じやすかったということ。

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この研究では、1) 脊柱起立筋 2) thoracolumbar fascia 3) 皮下組織に痛みの受容器をアクティベートする液体を注入し、それにより引き起こされた痛みの変化を追いました (Schilder et al., 2014) 。

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筋、fascia、皮下組織の中でfasciaの痛みが一番が強く、また一番長く続くことがわかりました (Schilder et al., 2014) 。

 

痛みの種類の違いも見られました (Schilder et al., 2014) 。

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Fasciaの痛みの強さは、筋と比べて痛みを受容する神経終末の密度が高いことが理由として挙げられています。この研究ではthoracolumbar fasciaを対象としていますが、crural fasciaと前脛骨筋を対象とした別の研究でもfasciaの高い痛みへのsensitivityは報告されており、一般的にfasciaは痛みを感じやすいtissueなのかなと思います。

 

これ、感覚的にも納得です。というのも、ストレッチポールに乗って繊維性の組織(例えばIT-Band)とか筋と筋の境をぐりぐりするととっても痛いからです。

 

 

さて、最初に述べたようにfasciaは身体のパーツを包み込んで束ねる役割をしています。筋も腱もfasciaに包まれています。もっと言えば骨も脊髄も全部似たような構造上の特徴を持つfasciaに包まれています。今回fasciaについて調べたことがきっかけで「fasciaってほぼ全ての傷害や機能低下・不全に関連しているんじゃないか」という印象を今は持っています。

 

それを考えるとやはり私も何かfasciaにアプローチする技術が欲しいなぁという気持ちになります。またそれとは別に、たくさんの人数を相手にするときにはフォームローラーやテニスボールでの筋膜リリースでセルフケアを促すことが選手にとっても自分にとっても重要だなとも思います。

 

セルフケアに関しては、色んな種類の現場の人にどんなふうに取り組んでいるのか是非聞いてみたいです。というのもフォームローラーやテニスボールは確かにとても便利で選手に積極的に使って欲しいものではありますが、マッサージほど効果的で無い場合も往々にしてあると思うからです。

 

日本での大学時代、「もう少し選手にセルフケアを教育して自分でやってもらえるようにしなければ」とか「身体のケアの面でも自立した選手になるように促さなければ」という想いと、「より早く効果的により良い状態に戻したい」「自分ができることは全部してあげたい」という想いの葛藤を常に持っていました。最後までふわふわしてしまったなという反省も未だにあります。

 

「自分でやってくれ 」と自分でも少し冷たく感じるときもあれば、「私は甘やかしてるのかな」と感じるときもあり、とにかく態度がぶれてしまっていた気がします。

 

現場を持っている、または持っていたみなさんは選手に向かうときどんなことに心掛けていますか?状況によるというのは間違いないと思いますが、何か気をつけていることがあれば是非教えていただきたいです。

 

組織の中で使える人間になるために、身につけなければならない知識と、学ばなければならない態度と、まだまだたくさんあるなぁと実感する日々です。

 

 

 

 

参考文献 

Kwong, E. H., & Findley, T. W. (2014). Fascia—Current knowledge and future directions in physiatry: Narrative review. Journal Of Rehabilitation Research & Development51(6), 875-884 10p. doi:10.1682/JRRD.2013.10.0220

Roman, M., Chaudhry, H., Bukiet, B., Stecco, A., & Findley, T. W. (2013). Mathematical analysis of the flow of hyaluronic Acid around fascia during manual therapy motions. JAOA: Journal Of The American Osteopathic Association113(8), 600-610 11p. doi:10.7556/jaoa.2013.021

Schilder, A., Hoheisel, U., Magerl, W., Benrath, J., Klein, T., & Treede, R. (2014). Sensory findings after stimulation of the thoracolumbar fascia with hypertonic saline suggest its contribution to low back pain. Pain, (2), 222-231. doi:10.1016/j.pain.2013.09.025

Stecco, A., Gesi, M., Stecco, C., & Stern, R. (2013). Fascial Components of the Myofascial Pain Syndrome. Current Pain And Headache Reports, (8), 1. doi:10.1007/s11916-013-0352-9 

 

 

画像

http://people.eku.edu/ritchisong/301notes3.htm

http://www.summitortho.com/2014/08/18/graston-technique-innovative-pt-treatment/

http://www.massagetoday.com/mpacms/mt/article.php?id=15020