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Papyrus

考えたことや調べたことを残しておこうと思います。

Carbohydrate Loading? I

Nutrition Energy System

3月の終わりにExercise Physiologyのクラスでグループプレゼンテーションがあります。テーマはCarbohydrate Loading (carbohydrate: 炭水化物, loading: 詰め込み)。

 

せっかくたくさん調べるなら、何年経っても忘れないように日本語でもまとめておこうと思い、今回はブログもこのテーマにしてみました。

 

"カーボ・ローディング"と言う言葉は日本語としても聞いたことがあるかもしれません。ただ、それだけ知名度がある言葉でありながら、私は実践している/したことがある人にはあまり会ったことがありません。みなさんの周りではどうでしょうか?

 

何に対しても言えることだとは思いますが、あまり知らずに"なんか良さそう"という理由で導入するのは、時には危険な場合もありますし、多くの場合、理解が十分でないとコストパフォーマンスも低く留まってしまうのではないかと思います。

 

調べる前の段階ではほとんど知識のなかったこのテーマではありますが、まとめることで自分も理解できるよう、そして読んでる方にも理解してもらえるようにチャレンジしてみようと思います!

 

では本題に入ります。

Carbohydrate loadingとはその名の通り、エネルギー源である炭水化物 (carbohydrate) を身体にたくさん溜め込んで、持久系のエクササイズの際に最後までエネルギーを切らさずパフォーマンスを高く保つための栄養的な戦略です。

 

私たちの身体で主にエネルギー源として使われている炭水化物はグルコース (glucose)、そしてグルコースを身体の中に溜めておくための形がグリコーゲン (glycogen) です。少し分かりにくいかもしれませんが、食事のあと消化吸収されたグルコースはそのままの形では身体に溜めておくことができないので、すぐにエネルギー源として使われない場合にはグリコーゲンに変えられて身体に貯蓄されるということです。

 

80kgの男性は身体の中にだいたい500gの炭水化物を溜めていると言われていて、その大部分が筋肉に溜められるグリコーゲンです (McArdle, Katch, & Katch,  2014) 。1gのグルコース/グリコーゲンは約4kcalのエネルギーを持つので、約2000kcalの炭水化物を身体に持っていると考えることができます。

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この量は食事や運動によって大きく変わります。例えば、激しい運動をしたり、絶食、または低炭水化物の食事を摂ることによってグリコーゲンの貯蔵は減ってしまうし、逆に炭水化物の割合が多い食事を取ることによってグルコーゲンの貯蔵を増やすこともできます (McArdle et al., 2014) 

 

ここから予想ができるかもしれませんが、carbohydrate loadingの策略は運動の強度や食事を調整してグリコーゲン貯蔵量を試合の日にピークにするというものです。

 

ここで、カーボ・ローディングの具体的な方法や実績を説明する前に整理しておきたいことがあります。それは"なんでグリコーゲン?"というポイントです。

 

このポイントは私が自分の考えを整理するのに一番引っかかったものでもあります。というのも、私たちの身体には"脂肪"というほぼ無制限のエネルギー源があるからです。

 

私が栄養学や運動生理学で習ったことといえば、1gの炭水化物が4kcalのエネルギーなのに対して脂質は9kcal。ATPの生成で言えば、1つのglucoseから作られるATPは30-32個なのに対してtryacylglycerol ("脂肪"として蓄えられてる脂質) からは-460個!

 

持久系のエクササイズでは脂質を主に使えばエネルギー切れすることなんてないんじゃないか?なんでグリコーゲンなんだ?というのが私の疑問でした。

 

私自身のこの疑問に対する答えを解説する中で、持久系のエクササイズにおけるグリコーゲンの重要性を理解してもらえたらと思います。

 

下のグラフはglucose uptakeとエクササイズの継続時間の関係を異なる運動強度で追ったものです。glocose uptakeは筋グリコーゲンに加えて、どれほど血中のグルコースや肝臓に貯蔵してあったグルコースを使ったかということを示します。

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このグラフから、運動強度が高いほどより多くのグルコースをエネルギー源として使っているのが分かります (Rose, & Richter, 2005) 。これは前回までの記事で紹介したことで説明が可能で、aerobic energy systemがATPを作り出すことができる早さを越えてエネルギーの需要があるとき (言い換えると運動強度が高いとき) そのギャップを埋めるように働くのがanaerobic glycolysisで、ここでATP生成の材料として使われるのがグルコース/グリコーゲンだからです。

 

つまり高強度のエクササイズに対応できる一番のエネルギー源がグルコース/グリコーゲンなのです。

 

次に脂質の代謝と代謝の早さを考えてみます。

身体の中で最も豊富な脂質がtriacylglycerolですが、これは1つのglycerolと3つのfatty acidに分解されます。Glycerolはglycolysisに入り、fatty acidはBeta-Oxidationというサイクルを経てacetyle-CoAになりcitric acid (krebs) cycleでさらに酸化されATPを生成します。

     

上で、私は1つのtriacylglycerolは-460個のATPを生成すると書きましたがこのビデオだと406とあります。酸化の進むコンディションによってATP生成の効率が変わり、このような数の幅があるようです。いずれにせよ押さえたいこととしては1つのtriacylglycerolから400以上の大量のATPが作られるということではないかと思います。

 

Glycerolが19個のATPを生成するのに対して、fatty acidは1つにつき147個 (私の教科書の方の計算では) 、そして1つのtriacylglycerolからは3つのfatty acidが作られるので合計441個。Triacylglycerolの代謝のうち、大部分を占めるfatty acidの酸化はcitric acid (krebs) cycleを通して、有酸素的な条件で (aerobic energy systemで) 行われるということになります。

 

さて、ここで考えたいのはaerobic energy systemがどういう性質を持っていたかということです。前に書いた記事を参照してもらえたらと思いますが、1) 稼働に時間がかかる、 2) ATPを作り出す早さがglycolysisと比べて遅い、という点が挙げられるかと思います。 

これがどのような意味を持つのかというと。

下のグラフは炭水化物をしっかり摂った場合 (CHO-loaded) と炭水化物を枯渇させた場合 (CHO-depleated) の2時間のサイクリングエクササイズ中の代謝の違いを示しています (Wagenmakers, Beckers, Brouns, Kuipers, Soeters, Van der Vusse, & Saris, 1991) 。

A: 炭水化物のエネルギー源としての利用

B: 脂質のエネルギー源としての利用

C: タンパク質のエネルギー源としての利用

D: 運動強度

 

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          A                                                              B  

        f:id:miwakosuzuki:20160302084711j:plain    f:id:miwakosuzuki:20160302084732j:plain

                                     C                                                             D

 

注目して欲しいのはBとD。Bのグラフから、炭水化物が足りていない場合どんどん脂質のエネルギー利用が増えていくのがわかります。そして運動強度はというと、下がり続けています。

 

高い運動強度を支えるenergy systemはglycolysisです。そしてglycolysisで使われるのは主に炭水化物。炭水化物が枯渇してこのenergy systemが効果的に使えなくなると高い運動強度が保てなくなってしまいます。

脂質は主にaerobic energy systemであるcitric acid (krebs) cycleとelectron transport chainでATPを生成しますが、このenergy systemではglycolysisを通して可能になるような高強度な運動には対応ができないのです。

 

また、citric acid (krebs) cycleが回っていくにはoxaloacetate (図中、krebs cycleの左上) という物質が必要です。これはpyruvateから作られます。そしてpyruvateはグルコース/グリコーゲンから作られます。ということは、グルコース/グリコーゲンがないとcitric acid (krebs) cycleは回らない、つまり、そもそもグルコース/グリコーゲンがないと脂質の代謝も上手く進んでいかないということになります。

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Carbohydrate loadingの話に繋がるよう、ここで一度今までの流れを整理すると、

1) グルコース/グリコーゲンといった炭水化物は強度の高い運動をする際に選択的にエネルギー源として使われる。

2) 脂質は主にaerobic energy systemでATPを作るのに使われるので、高強度の運動のために使われることはあまりなく、グルコース/グリコーゲンが枯渇してしまうと高い運動強度が保てなくなる。

 

これが私の"なんでグリコーゲン?"の答えです。

高い運動強度 (≒高いパフォーマンス) を競技の最後まで続けるために、グリコーゲンの貯蔵を最後までもたせたい、だから試合前までにより多くのグリコーゲンを溜め込んでおきたい、というのがcarbohydrate loadingの根本にある考えです。

 

実際の方法や実施した結果も書こうと思っていましたが、予想以上に長くなってしまったので、次の記事に続きます!

 

 

参考文献

McArdle, W.D., Katch, F.I., & Katch, V.K. (2014) Exercise physiology: Energy,nutrition, and human performance. Philadelphia: Lippincott Williams & Wilkins.

Rose, A., & Richter, E. (2005). Skeletal muscle glucose uptake during exercise: How is it regulated?. Physiology, 20260-270.

Wagenmakers, A. J., Beckers, E. J., Brouns, F., Kuipers, H., Soeters, P. B., Van der Vusse, G. J., & Saris, W. H. (1991). Carbohydrate supplementation, glycogen depletion, and amino acid metabolism suring exercise. American Journal of Physiology, 260(6), E883-E890.

 

画像

http://sbi4uraft2014.weebly.com/krebs-cycle.html

 

動画

https://www.youtube.com/watch?v=CyjMph4XeWE