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PAPYRUS

考えたことや調べたことを残しておこうと思います。

FASCIAって何者?

色々と書き始める前に。

ついについに大学院の合格通知をいただきました!第一志望のIndiana State Universityです。色々な方にお世話になってやっと掴んだ、というか与えてもらった大事な大事なチャンスです。

 

頑張らなきゃな、と身が引き締まるとともに、ワクワクが身体から溢れ出すくらいエネルギーがみなぎっています!学べることはとことん学び尽くそうと思います。

 

さて、今回はfasciaについてまとめたいと思います。正直fasciaは日本語で何なのかわかりません。「筋膜」と呼ばれることが多いと思いますが、それは英語で言うmyofasciaではないかなと思ったり。調べていくと、fasciaは必ずしも筋に付随するものではないこともわかりました。だから単純に「筋膜」と訳していいのかもわからないので、このブログでは「筋膜」ではなく「fascia」と書こうと思います。

 

※ 先に書かせてもらいますが、ちょっとグロい映像を載せているので、手術の映像などが苦手な人はここから先に進まないほうが良いと思われます。

 

最近では(随分前から?)フォームローラーやストレッチポールなどfasciaをターゲットにしたケア用品がたくさんあり、私自身も日本での学生トレーナー時代から選手にはこれらを使ってセルフケアをするように促してきました。

 

でも正直、fasciaのことをよく理解しているかと言ったらNoです。日本でもアメリカでも解剖学の授業などではさらっと触れる程度で、基本の知識はあまり持っていないのにストレッチポールやテニスボールを使っての筋膜リリースなど、応用の仕方に関しては自分の周りに情報が溢れているように感じました。

 

アメリカではグラストンやテクニカ・ガビラン、日本では鍼などfasciaにアプローチする治療法もたくさんあります。私がお付き合いしているATCの山中氏がガビランを重宝しているのもよく聞いていて、私もそういう技術をひとつのツールとして持ちたいなという願望もあります。

 

セルフケアにしても上で紹介したような技術にしても、やはり効果を最大にするためにはもう少しよく知る必要があると思うので調べたことをまとめて見ようと思います。

 

まずfasciaとは。

比較的新しい論文でもはっきりと定義されていないことが多い印象ですが、共通していることは身体のパーツを束ねる結合組織だということでしょうか。

 

これを一端fasciaの定義とすると、この定義に当てはまるものは身体の中に山ほどあります。例えば、靭帯、腱、支帯、筋内膜 (endomysium) 、筋周膜 (perimysium) 、筋外膜 (epimysium) 、関節包、髄膜などなど。

 

これらの結合組織は主にコラーゲンで構成されますが、それぞれの違いはコラーゲンの種類や密度、アレンジメントにあるようです。1

 

似通った構成をしているとは言っても機能は様々で一概に「fascia」として括るのは難しいですが、「fascia system」として大きくカテゴライズすることは理解する上で役立つかもしれません 。1

 

スポーツや治療の現場でよく扱われるfasciaをいくつか見ていきたいと思います。

 

まずはsuperficial fasciaとdeep fascia。Superficial fasciaは皮膚、皮下脂肪と一体になっているfasciaで、deep fasciaは筋のグループを束ねるfasciaです。人差し指を(どこでも良いけれど例えば)反対側の腕に押し当てて動かしてみると皮膚が動きますよね。この動きは筋と皮膚の間で起きていて、これを可能にしているのがsuperficial fasciaとdeep fasciaと思って良いと思います。Superficial fasciaは皮膚側、deep fasciaは筋側にくっついてこの2つのfasciaがスライドが起こるサーフェスになっているようです。

 

次はendomysium、perimysium、epimysium。EpimysiumをDeep fasciaと表記するケースも何度か見ましたが、場所によってそういう場合もある、ということなのかなと思います。Endomysiumは筋線維を包むfascia、perimysiumは筋線維束を包むfascia、そしてepimysiumは筋全体を包むfasciaです。

 

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人体を使ってsuperficial fasciaとdeep fasciaを説明している映像があったので載せてみました。この映像で気分を悪くしてしまったらごめんなさい。

 

   

 

上でsuperficial fasciaとdeep fasciaの間でスライドが起きると書きましたが、多くのfasciaが同じように組織間の潤滑剤として働きます。例えばdeep fasciaとepimysiumの間、それからepimysium間でも同じようにスライドが起き、それにより筋のグループがひとつのfasciaで包括されながらも構成するそれぞれの筋が単独の筋としても機能するようになっています。

 

このfascia間のスライドは非常に重要で、このスライドが円滑に行われなくなると筋の動きに影響がでるのはもちろん、痛みをも引き起こします。世に出回っているfasciaへのアプローチのほとんどがこの円滑なスライドを再獲得するための手技なのではないかなとも思います。

 

下にfasciaの映像を貼りました。Fasciaってこんな感じらしいですよ!立体的に枝分かれした、水分をたっぷり含む繊維が柔軟に動くことでスライドが可能になっているようです。

   

 

この動画の6分頃と18分頃を見てもらうと、立体的なfasciaの繊維の構成が、スライドを生み出すのにいかに有効な形かがわかると思います。

   

 

結合組織って恥ずかしながらあまり理解をしていなかったのですが、今回fasciaについて調べていく中で少し理解が深まったように思います。結合組織は構成する細胞そのものよりも、その細胞が作り出す細胞外の繊維(例えばコラーゲンとか)がその組織を形づくっていて、その繊維の違いが組織の構造や機能の違いになるようです。上の動画で見ているネットのような構造の大部分は細胞外の繊維で、これは細胞外基質(extracellular matrix)と呼ばれます。

 

この動画は結合組織のタイプを説明しています。Fasciaに限っている訳ではない、というかむしろこの動画でもfasciaには注目されていませんが、結合組織のタイプを知るのにはとても良いなと思ったので貼ってみました。

           

 

この2つの動画は細胞外基質について説明しています。2つ見ると30分かかってしまうので興味があれば時間のあるときに見てみてください。

           

           

 

いわゆる"fascia"(靭帯や健ではなく)の細胞外基質には、ヒアルロン酸が多く含まれていて、これがfasciaのスライドに一役かっているようです (Roman, Chaudhry, Bukiet, Stecco, & Findley, 2013) 。「ヒアルロン酸」と聞くとトロトロとした液体を思い浮かべますよね。これが潤滑剤となっているのも納得できます。

 

Fasciaの動きの悪さ(スライドのしにくさ)が身体の動きを悪くしたり痛みを引き起こしたりすると書きました。ヒアルロン酸は乳酸などの影響でpHが下がったり、あとは単純に温度が下がったりすると、粘度が増し、お互いにくっつき合いfascia間でのスライドのしやすさが低下してしまいます。2

 

もちろん私たちの身体は下がってしまったpHをもとに戻すシステムを兼ね備えていますし、pHが元の値に戻るとともに基本的にはヒアルロン酸の粘度も元に戻っていきます。2

 

ですが、ヒアルロン酸の粘度が完全に回復しにくい場所もあるようで、粘度が回復されずにくっついたままになっている部分がrestrictionとなり、トリガーポイントと呼ばれる痛みにとても敏感な場所として認識されるようになるのではないかということも言われています。2

 

ヒアルロン酸の粘度を下げることが健全なスライドを取り戻すのにはとても重要です。温度を上げる(温める)ことも有効ですが、これはくっついてしまったヒアルロン酸の構造には何もアプローチをしていないので、効果は一時的で温度が下がるとまた粘度は増し、動きにくさや痛みも出てきてしまいます。

 

くっつき合って大きくなってしまったヒアルロン酸の構造を壊すのに何が有効かというと、物理的なストレスが良いようです。圧迫や摩擦などの刺激はヒアルロン酸を小さくします。このとき、炎症のような反応が起こり、それが適切な数や大きさのヒアルロン酸を回復するのに重要なのではないかと予想されています。2

 

これがフォームローラーやグラストン・ガビランのような道具がrestrictionを解放する手段としてよく使われる理由だと思います。

 

どのような機械的な刺激が一番ヒアルロン酸の動きを促すかということを数学的に検証した研究3がありました。数学ができなすぎて一体何を計算しているのか全く理解できなかったけれど、結論ではグラストンやガビランのような道具を使うと、人間の手でマッサージするよりもかなり小さな面積に大きなプレッシャーを加えることができるので、周囲のプレッシャーとの差によってより多くのヒアルロン酸の流れを生み出すことができ、これらの道具を併用する方がマッサージのみよりも有効だということが言われていました 。3 

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さて、ここまでfasciaのスライドのことについて書いてきましたが、「痛み」についても少しまとめてみたいと思います。痛みを「痛み」として知覚するプロセスにおいては、神経がとても重要な役割を担っています。

 

どのような種類の刺激が、どのような種類の痛みで、どれくらいの強さの痛みとして知覚されるか、ということは、どのような神経・受容器がどのくらいの密度でその組織をinnervateしているかに拠るかと思います。

 

Fasciaの痛みってどのようなものだと思いますか?

私が読んだ研究はthoracolumbar fasciaという腰の部分にある何層にも重なったかなり大きなfasciaを対象にしたものでしたが、このfasciaの痛みへのsensitivityは、筋よりも皮下組織よりも高かったのです。つまり、thoracolumbar fasciaが一番痛みを感じやすかったということ。

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この研究では、1) 脊柱起立筋 2) thoracolumbar fascia 3) 皮下組織に痛みの受容器をアクティベートする液体を注入し、それにより引き起こされた痛みの変化を追いました。4

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筋、fascia、皮下組織の中でfasciaの痛みが一番が強く、また一番長く続くことがわかりました。4

 

痛みの種類の違いも見られました。4

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Fasciaの痛みの強さは、筋と比べて痛みを受容する神経終末の密度が高いことが理由として挙げられています。この研究ではthoracolumbar fasciaを対象としていますが、crural fasciaと前脛骨筋を対象とした別の研究でもfasciaの高い痛みへのsensitivityは報告されており、一般的にfasciaは痛みを感じやすいtissueなのかなと思います。

 

これ、感覚的にも納得です。というのも、ストレッチポールに乗って繊維性の組織(例えばIT-Band)とか筋と筋の境をぐりぐりするととっても痛いからです。

 

 

さて、最初に述べたようにfasciaは身体のパーツを包み込んで束ねる役割をしています。筋も腱もfasciaに包まれています。もっと言えば骨も脊髄も全部似たような構造上の特徴を持つfasciaに包まれています。今回fasciaについて調べたことがきっかけで「fasciaってほぼ全ての傷害や機能低下・不全に関連しているんじゃないか」という印象を今は持っています。

 

それを考えるとやはり私も何かfasciaにアプローチする技術が欲しいなぁという気持ちになります。またそれとは別に、たくさんの人数を相手にするときにはフォームローラーやテニスボールでの筋膜リリースでセルフケアを促すことが選手にとっても自分にとっても重要だなとも思います。

 

セルフケアに関しては、色んな種類の現場の人にどんなふうに取り組んでいるのか是非聞いてみたいです。というのもフォームローラーやテニスボールは確かにとても便利で選手に積極的に使って欲しいものではありますが、マッサージほど効果的で無い場合も往々にしてあると思うからです。

 

日本での大学時代、「もう少し選手にセルフケアを教育して自分でやってもらえるようにしなければ」とか「身体のケアの面でも自立した選手になるように促さなければ」という想いと、「より早く効果的により良い状態に戻したい」「自分ができることは全部してあげたい」という想いの葛藤を常に持っていました。最後までふわふわしてしまったなという反省も未だにあります。

 

「自分でやってくれ 」と自分でも少し冷たく感じるときもあれば、「私は甘やかしてるのかな」と感じるときもあり、とにかく態度がぶれてしまっていた気がします。

 

現場を持っている、または持っていたみなさんは選手に向かうときどんなことに心掛けていますか?状況によるというのは間違いないと思いますが、何か気をつけていることがあれば是非教えていただきたいです。

 

組織の中で使える人間になるために、身につけなければならない知識と、学ばなければならない態度と、まだまだたくさんあるなぁと実感する日々です。

 

 

 

 

参考文献 

1. Kwong EH, Findley TW. Fascia-Current knowledge and future directions in physiatry: Narrative review. J Rehabil Res Dev. 2014;51(6):875-884.

2. Stecco A, Gesi M, Stecco C, Stern R. Fascial Components of the Myofascial Pain Syndrome. Curr Pain Headache Rep. 2013;17(8).

3. Roman M, Chaudhry H, Bukiet B, Stecco A, Findley TW. Mathematical analysis of the flow of hyaluronic acid around fascia during manual therapy motions. J Am Osteopath Assoc. 2013;113(8):600.

4. Schilder A, Hoheisel U, Magerl W, Benrath J, Klein T, Treede RD. Sensory findings after stimulation of the thoracolumbar fascia with hypertonic saline suggest its contribution to low back pain. Pain. 2014;155(2):222-231.