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Papyrus

考えたことや調べたことを残しておこうと思います。

CAI Article Review - Sensorimotor Function

Ankle Instability Neuromuscular changes テスト勉強

続きを書くと言いながら、全然書けていなかった記事がたくさんありますが、その中のひとつ、CAI (Chronic Ankle Instability) に関して、最近授業で読んで面白かった論文があるので日本語でまとめてみようと思います。

 

この記事を書いたのは一年も前かぁ...としみじみする気持ちは置いておいて...

CAIについて考察した上の記事でまとめた内容は、

1) CAIとはankle sprain受傷後長い間続く不安定感のことで、

2) Ankle sprainの既往者にはATFLの厚さが増すという構造的な変化が確認されたが、この変化はCAIのないankle sprain既往者にも見られたため、この変化はCAIのonsetに直接関係するものではないだろう。

3) CAIを持つグループの歩行中の下肢の筋のアクティベーションのタイミングを見てみると、健常者よりも早い段階で長腓骨筋がアクティベートされており、不安定さを克服するための戦略とみられるのfeed-forwardが学習されていた。

4) 一方、このfeed-forwardの学習により、本来足関節の重要なdynamic stabilizerとして機能すべき長腓骨筋がその役割を果たしていない可能性もある。

5) 長腓骨筋の反射的収縮は足関節の内反捻挫を防ぐ重要なメカニズムであるが、CAIのグループの長腓骨筋では、この反射が上手く機能していないことがわかり、

6) この反射の機能不全が、CAIの「不安感」や「不安定感」の正体であるのではないか。

というものでした。

今回紹介したい研究は『長腓骨筋の反射的収縮は足関節の内反捻挫を防ぐ重要なメカニズムであるが、CAIのグループの長腓骨筋では、この反射が上手く機能していないことがわかり』の部分に関連します。

 

従来、足首のリハビリといえば筋力やバランスなどのmotor outputにフォーカスする傾向にありますが、そのような方法ではCAIの発生率を減らすことはできないと言われています。

 

そこで今回紹介する研究では、従来のmotor outputではなく、sensory inputに焦点を当てたトリートメントが、CAIの改善に有効かどうかを検証しました。

Sensory-Targeted Ankle Rehabilitation Strategies for Chronic Ankle Instability (Mckeon & Wikstrom, 2016)

 

上に貼った記事の中でも反射の説明をしていますので詳しくはそちらを参照していただきたいと思いますが、反射によるpostural controlは、sensory input ➡︎ 脊髄反射 ➡︎ motor outputという流れで成立します。Sensory inputに焦点を当てるというこの研究は、feed-back (sensory input) の情報量を増やすことで、adjustment (motor output) の改善できる可能性があるだろうという仮説のもとに考えられたものです。

 

▶︎研究デザイン

Randomized controlled trial 

 

▶︎被験者

2012年1月から2014年2月までにアメリカ国内の3つの公立大学からリクルートされたCAIを持つ一般の人口(教授、学生、職員など)

ここでのCAIの定義は、1) 過去6ヶ月以内に最低2回giving awayを経験したこと、2) FAAM*において患側が健側の90%以下、そして3) FAAM Sports**において患側が健側の80%以下

* ** 主観的な足首の機能(後ほど詳しく説明します)

 

▶︎介入(トリートメント)

各グループ、2週間で6回、5分間のトリートメント

1) 足関節モビリゼーション(Oscillation Grade III で 2分 X 2セット)

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2) 足底マッサージ(5分間)

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3) ふくらはぎストレッチ(3セット X 3分間 10秒レスト)

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4) コントロール群

 

▶︎サンプリング

3つのトリートメント群とコントロール群の4グループに各20名ずつ

 

▶︎アウトカム

1) Patient-oriented measurements

FAAM、 FAAM Sports、 giving awayの回数、 NASA PASS***を1) 最後のトリートメントから72時間以内と、2) 1ヶ月後のフォローアップの2回測定。

*** 有酸素的なフィットネスレベルの指標

 

CAIを定義するのにも使われたFAAMとFAAM-Sですが、これは一体何かというと、主観的な足関節の機能を把握するために作られた質問紙です。

FAAMは患者のADLに焦点を当てた質問紙で、こんな感じ⬇︎

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FAAM-Sはスポーツにより特化した質問紙で、こんな感じ⬇︎

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少し本題から外れてしまいますが、アメリカでは今FAAMのような質問紙がたくさん作られ、使われています。このような質問紙をリハビリの過程に取り入れることで、そのリハビリが有効なのか見直す必要があるのかを客観的に把握することができるからです。アメリカでもATは他のhealthcare professionと比較して低く見られることがあるという現実があります。そこで、自分たちの取り組みをより客観的データによってバックアップしていこうという流れの中のひとつであるようです。

 

2) Clinician-oriented measurements

荷重下での背屈可動域と片足バランスを1) 一回目のトリートメントの直後と、2) 最後のトリートメントの72時間以内の2回測定。

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▶︎結果

1) Patient-oriented measurements

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どのトリートメントがどのoutcome measurementにおいて有効だったのかを表に示しました。⭕️はコントロール群と比較して有意差あり (p=0.10) かつMDC (minimal detectable change) を上回る、❌はそれ以外。

 

最後のトリートメントから72時間以内⬇︎

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1ヶ月後のフォローアップ⬇︎

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2) Clinician-oriented measurements

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ここでも同じように表にまとめました。

 

一回目のトリートメントの直後⬇︎f:id:miwakosuzuki:20170212140333p:plain

 

最後のトリートメントから72時間以内⬇︎

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▶︎結論

Sensory inputをターゲットとした3種類のトリートメントは、それぞれCAIを持った患者の主観的な足関節の機能、荷重時の背屈または片足バランスを改善した。

 

私がこの研究が面白いなと思ったのは、自分自身が今までここで使われた3種類のトリートメントを「sensory inputを改善する」という目的で行ったことがなかったからです。例えばストレッチは筋の柔軟性獲得のためとか、関節モビリゼーションは痛みの軽減・可動域獲得のためとか、他の目的で行ったことはありますがsensory inputという観点には気づいていませんでした。

 

3つのトリートメントの中で全てのアウトカムで改善が見られたものはありませんが、これらのトリートメントはもちろん単独で使われるものではありません。全てをひとつのリハビリプログラムに取り入れることでより多くのアウトカムを獲得するように工夫する必要があります。

 

関節モビリゼーションも足底マッサージもストレッチも私は足関節のリハビリでは毎回取り入れていたと思うので、この論文を読む前と読んだ後では私が作るリハビリプログラムにはもしかしたらあまり変わりはないのかもしれません。でも、これを知ったことで選手のセルフケアへのモチベーションを高めるための説明は絶対に以前よりもうまくできると思います。

 

ゴルフボール等を使ったマッサージやストレッチはもちろん自分でできます。足関節のモビリゼーションも、今回使われたのはgrade IIIのoscillationで自分自身で同じような刺激を与えるのは少し難しいかもしれませんが、様々なsensory inputを与えるという点では自分でできるモビリゼーションも有効かもしれません。

 

この論文を読んだあと、たまたまYoutubeで「あれ、なんか聞き覚えがあるなぁ」という情報に出会いました。26分ごろから始まる一流スポーツ選手の共通点に関する話題です。スポーツ記者が様々な一流スポーツ選手を取材する中で、彼らは10歳までに足裏をたくさん刺激していることに気づいたと言います。


もちろん科学的に証明できている訳でもなんでもありませんが、一流スポーツ選手特有のpostural controlの能力の高さは、もしかしたら神経系の発達が著しい幼少期に足の裏にたくさん刺激を受けることで培われたという側面があるかもしれないのかな、ということを考えながら聞いていました。

 

 

 

 

Mckeon PO, Wikstrom EA. Sensory-Targeted Ankle Rehabilitation Strategies for Chronic Ankle Instability. Medicine & Science in Sports & Exercise. 2016;2015;48:776-784.