PAPYRUS

アメリカの大学院でアスレティックトレーニングを学んでいます。考えたことや調べたことを残しておく目的でブログを書いています。

CAI 論文レビュー: Sensorimotor Function

続きを書くと言いながら、全然書けていなかった記事がたくさんありますが、その中のひとつ、CAI (Chronic Ankle Instability) に関して、最近授業で読んで面白かった論文があるので日本語でまとめてみようと思います。

 

1年前にCAIについて書いた記事があるので興味があればお読みください。

 

CAIとは足首の捻挫後、長く続く不安定感のことです。従来、足首のリハビリといえば筋力やバランスなどのmotor outputにフォーカスする傾向にありますが、そのような方法ではCAIの発生率を減らすことはできないと言われています。

 

そこで今回紹介する研究1では、従来のmotor outputではなく、sensory inputに焦点を当てたトリートメントが、CAIの改善に有効かどうかを検証しました。その研究がこちら➡️Sensory-Targeted Ankle Rehabilitation Strategies for Chronic Ankle Instability (Mckeon & Wikstrom, 2016)。

 

上に貼った記事の中でも反射の説明をしていますので詳しくはそちらを参照していただきたいと思いますが、反射によるpostural controlは、sensory input ➡︎ 脊髄反射 ➡︎ motor outputという流れで成立します。Sensory inputに焦点を当てるというこの研究は、feed-back (sensory input) の情報量を増やすことで、adjustment (motor output) の改善できる可能性があるだろうという仮説のもとに考えられたものです。

 

▶︎研究デザイン

Randomized controlled trial 

 

▶︎被験者

2012年1月から2014年2月までにアメリカ国内の3つの公立大学からリクルートされたCAIを持つ一般の人口(教授、学生、職員など)

ここでのCAIの定義は、1) 過去6ヶ月以内に最低2回giving awayを経験したこと、2) FAAM*において患側が健側の90%以下、そして3) FAAM Sports**において患側が健側の80%以下

* ** 主観的な足首の機能

 

▶︎介入(トリートメント)

各グループ、2週間で6回、5分間のトリートメント

1) 足関節モビリゼーション(Oscillation Grade III で 2分 X 2セット)

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2) 足底マッサージ(5分間)

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3) ふくらはぎストレッチ(3セット X 3分間 10秒レスト)

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4) コントロール群

 

▶︎アウトカム

1) Patient-oriented measurements (最後のトリートメントから72時間以内と1ヶ月後のフォローアップの2回測定)

FAAM、 FAAM Sports、 giving awayの回数、 NASA PASS(有酸素的なフィットネスレベルの指標)

 

2) Clinician-oriented measurements (1回目のトリートメントの直後と最後のトリートメントの72時間以内の2回測定)

荷重下での背屈可動域、片足バランス

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▶︎結果

1) Patient-oriented measurements

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どのトリートメントがどのoutcome measurementにおいて有効だったのかを表に示しました。⭕️はコントロール群と比較して有意差あり (p=0.10) かつMDC (minimal detectable change) を上回る、❌はそれ以外。

 

最後のトリートメントから72時間以内⬇︎

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1ヶ月後のフォローアップ⬇︎

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2) Clinician-oriented measurements

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ここでも同じように表にまとめました。

 

一回目のトリートメントの直後⬇︎f:id:miwakosuzuki:20170212140333p:plain

 

最後のトリートメントから72時間以内⬇︎

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▶︎結論

Sensory inputをターゲットとした3種類のトリートメントは、それぞれCAIを持った患者の主観的な足関節の機能、荷重時の背屈または片足バランスを改善した。

 

私がこの研究が面白いなと思ったのは、自分自身が今までここで使われた3種類のトリートメントを「sensory inputを改善する」という目的で行ったことがなかったからです。例えばストレッチは筋の柔軟性獲得のためとか関節モビリゼーションは痛みの軽減・可動域獲得のためなど、他の目的で行ったことはありますがsensory inputという観点には注目していませんでした。

 

3つのトリートメントの中で機能・可動域・バランスの全てにおいて改善が見られたものはなかったことから、ストレッチ・マッサージ・関節モビリゼーションはどれも万能なトリートメントではないということがわかりますがこれらを組み合わせることでより多くのベネフィットを得ることができるでしょう。

 

 

この論文を読んだあと、たまたまYoutubeで「あれ、なんか聞き覚えがあるなぁ」という情報に出会いました。26分ごろから始まる一流スポーツ選手の共通点に関する話題です。スポーツ記者が様々な一流スポーツ選手を取材する中で、彼らは10歳までに足裏をたくさん刺激していることに気づいたと言います。


もちろん科学的に証明できている訳でもなんでもありませんが、一流スポーツ選手特有のpostural controlの能力の高さは、もしかしたら神経系の発達が著しい幼少期に足の裏にたくさん刺激を受けることで培われたという側面があるかもしれないのかな、ということを考えながら聞いていました。

 

 

参考文献

1. McKeon PO, Wikstrom EA. Sensory-Targeted Ankle Rehabilitation Strategies for Chronic Ankle Instability. Med Sci Sports Exerc. 2016;48(5):776-784.