PAPYRUS

アメリカの大学院でアスレティックトレーニングを学んでいます。考えたことや調べたことを残しておく目的でブログを書いています。

FAAM - 患者立脚型評価

今回は患者立脚型評価 (patient-reported outcome) のひとつであるfunctional ankle ability measure (FAAM) を紹介しようと思います。

 

まず、患者立脚型評価とは何かというと、傷害や疾患に関して患者自身が行う評価です。多くの場合、質問紙形式で、患者はそれぞれの質問に関して最も当てはまる答えを選択肢の中から選ぶ、というとてもわかりやすいものです。

 

今回取り上げたいと思ったのはこちらのFAAM⏬

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FAAMには2つのスケールがあり、上はADLに焦点を当てたもの、下はスポーツ活動に焦点を当てたものです。

ADLのスケールでは、例えば、立つこと平らな地面を歩くこと裸足で歩くことなどがどれくらい難しいか(全く難しくない、少し難しい、まあまあ難しい、とても難しい、不可能)を答えます。

 

このような質問紙を使うメリットは普段の問診ではあまり聞かないこと、または聞き忘れてしまうことを含めて足部や足関節の機能に関して、網羅的に患者の情報を得られることがまず第一にあげられると思います。

 

また、ここで評価される足部・足関節の機能はクリニシャンが測ったものではなくて、患者自身がどのようにそのコンディションを認知しているかを測るものです。アメリカのヘルスケアではpatient-centered careといって患者の価値観や好み、ニーズに応じたケアを提供することが大切だとされています。このような質問紙を用いることで、患者自身がそのコンディションに対してどのように思っているのかを評価することができ、患者の価値観やニーズと照らし合わせて、治療やリハビリにおいて、何を優先すべきなのかという判断をより効率的にできるかもしれません。

 

また、結果は数値化されるので、定期的に質問紙を用いた評価を繰り返し、クリニシャンが提供しているリハビリのプログラムが有効かどうかをその数値の変遷をもとに判断することもできます。

 

FAAMに関するエビデンスを紹介すると、信頼性(reliability)、妥当性(validity)ともに高く(test-retest reliability: ICC=0.87-0.89)、検出可能な最小限の変化(minimal detectable change; 95%CI)はFAAM-ADLが5.7ポイント、FAAM-Sportsが12.5ポイントです。1

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上の画像は⏬のリンク先のウェブページからいただきました。妥当性と信頼性の説明もこちらでされています。

検出可能な最小限の変化とは、測定のエラーではなく実際の変化が起こったことによるスコアの変化の最小値です。FAAM-ADLの検出可能な最小限の変化は5.7ポイントなので、FAAM-ADLのスケールのスコアが5.7ポイント以上上がったら実際に足部・足関節の機能は向上されたと言えるということです。

 

スコアの計算の仕方は、各質問項目にて得られたポイントを合計し、FAAM-ADLはそのスコアを84で割って100をかけた値、そしてFAAM-Sportsは32で割って100をかけた値がそれぞれの最終スコアです。0が最小、100が最大で、100が最も良い値です。1

 

2015年にFAAM日本語版の妥当性・信頼性も証明されているようですが2、日本語でググってもそれらしい質問紙を見つけられることはできませんでした。日本語版のFAAMはどうやったら使用できるのでしょう??(著者から判断すると、私の日本の大学の出身ゼミで翻訳と妥当性・信頼性の研究が行われたのだと思いますが...)

 

患者立脚型評価がアスレティックトレーニングでも盛んに取り入れられるようになった背景は、アスレティックトレーニングという分野が他のヘルスケアの分野(例えば理学療法士など)に比べて少し遅れをとっているという現状が関連すると聞きました。それを克服するために、トリートメントの効果を数値として証明し、アスレティックトレーナーが提供するトリートメントの価値を高めようという試みのひとつとして導入され始めたそうです。

 

今まであまり測られることのなかった患者側のコンディションへの認知を質問紙を使い数値化して評価しようというのが患者立脚型評価の目的です。

 

最初に授業で患者立脚型評価のことを学んだとき、ただでさえ混み混みのATルームで質問紙を評価に導入するなんて、ちょっと面倒くさいなと思ったのが正直な感想でした。でもその背景を理解すると、毎回の記録が後々自分のトリートメントの効果を証明し、ひいては自分の職業の価値を高めることに繋がり得るとわかり、いつか日本でも実践したいなと思いました(ので、紹介程度に書いてみました)。

 

 

参考文献

1. Martin RL. The development of the Foot and Ankle Ability Measure, ProQuest Dissertations Publishing 2003.

2. Uematsu D, Suzuki H, Sasaki S, et al. Evidence of Validity for the Japanese Version of the Foot and Ankle Ability Measure. J Athl Train. 2015;50(1):65-70.