PAPYRUS

アメリカの大学院でアスレティックトレーニングを学んでいます。考えたことや調べたことを残しておく目的でブログを書いています。

腰か仙腸関節か - 仙腸関節機能障害のスペシャルテスト

前のセメスターで下肢の評価を学びました。その中で仙腸関節の評価も少し触れて、面白いなと思ったことがあったので書いておきたいと思います。

 

仙腸関節の痛みは仙腸関節が位置するお尻のあたりに出ることが多いですが、腰椎や仙骨からの症状と似ているときがある上に、仙腸関節の痛みを引き起こす特有の動きや姿勢がないことから、仙腸関節の機能障害を診断・評価するのはとても難しいと言われています。1

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また、仙腸関節の評価は症状の観点だけではなく、身体検査(physical examination)の観点でも難しいと言えます。これは何故かと言うと高い正確性を持った仙腸関節の機能障害のためのスペシャルテストがないからです。1,2

 

そこで仙腸関節の機能障害のrule-in・rule-outの方法として授業で学んだのは5つのスペシャルテストを「スペシャルテスト群」として用い、その5つのうち3つ以上が陽性だった場合に仙腸関節の機能障害が陽性であるとする考え方です。1,3

そのスペシャルテスト群を構成する5つのテストはCompression Test、Distraction Test、Thigh Thrust Test、Geanslen Test、Sacral Thrust Testです。1,3 下にそれぞれのテストの動画を貼りましたので、そちらをご参照ください。

 

Compression Test


Distraction Test


Thigh Trust Test


Geanslen Test


Sacral Thrust Test


それぞれのスペシャルテストの正確性に関するデータは🔽の表の通りです。Thigh thrust testが最も高いsensitivity (0.88) を持っていて、Distraction testが最も高いspecificity (0.81) を持っていることがわかりました。1 これらの数値から考えると、thigh thrust testとdistraction testが両方陽性であれば、決定的とは言えなくてもかなり高い確率で仙腸関節の機能障害があると言えるでしょう。

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🔽の表は5つ(Gaenslen testは左右両方テストするので実質的には6つ)のテストのうち、いくつ以上陽性があるかで正確性を比べています。

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注目すべき点は以下の2点です。

▶️1 or more positive tests (ひとつ以上陽性) の場合のsensitivityは1.00。つまり5つのテストが全て陰性であれば仙腸関節機能障害はrule-outできるということ。

▶️3 or more positive tests (三つ以上陽性) の場合、sensitivityを下げずにspecificityを上げることができる。つまり、三つ以上陽性があったかどうかで機能障害があるかどうかを判断した場合に最も正確に評価・診断できるということ。

 

また、gaenslen testを除いた4つのテストのうち2つ以上陽性、という場合にも高いsensitivityとspecificityを保つことができることがわかりました🔽。

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🔽のチャート1、とてもわかりやすいと思ったので貼ってみました。ここで推奨される評価の流れは、臀部痛を訴える患者にまず最初に高いsensitivityとspecificityを持つthigh thrust testとdistraction testを試し、両方陽性だったら仙腸関節機能障害をrule-in。そうでない場合、他のテストを試し、最終的に(gaenslen testを除く4つのテストのうち)2つ以上が陽性であればrule-in。全て陰性であればrule-out、というものです。

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ここで少し紛らわしいのは、椎間板に問題があって腰部や臀部に痛みが出ている場合、仙腸関節に問題がなくても上で紹介したようなスペシャルテストが陽性になってしまう点です。3 その問題を解決するには🔽のチャートに示されたように仙腸関節のテストをする前にその痛みが椎間板由来かどうかを確かめることが重要であると言われています。3 

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痛みが椎間板由来かどうかを判断するのに、ここで紹介している研究3で使用された方法はマッケンジー・アセスメント(McKenzie Assessment)という方法です。

🔽の図(参考文献4の論文より)のような動作を繰り返した時の症状を観察します。3 痛みなどの症状が末梢へ出たり(peripheralization*)、末梢に出ていた症状が中枢へ来たり(centralization*)したら、その症状は椎間板由来とします。3

*centralizationやperopheralizationなどの用語を深く理解するには元の文献を読まれることをお勧めします。うまく日本語にできているかわからないので...

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マッケンジー・アプローチのレビュー5の中でわかりやすい(?)表があったので貼ってみました🔽椎間板由来の痛みはDerangementsに分類されます。

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椎間板由来ではない腰痛は最終域で痛みが観察されるのに対し、椎間板由来の腰痛は最終域に到達する前から、動かしている段階でも痛い、という点も評価の際に役立つかもしれません。5

 

最初に椎間板由来の痛みをrule-outすることで、仙腸関節の「スペシャルテスト群」の正確性がより高まったことも報告されており、3 腰部や臀部の評価はより包括的はアプローチが大切だなと思いました。

 

参考文献

1. Laslett M, Aprill CN, McDonald B, Young SB. Diagnosis of sacroiliac joint pain: validity of individual provocation tests and composites of tests. Man Ther. 2005;10(3):207.

2. Dreyfuss P, Michaelsen M, Pauza K, McLarty J, Bogduk N. The value of medical history and physical examination in diagnosing sacroiliac joint pain. Spine. 1996;21(22):2594-2602.

3. Laslett M, Young SB, Aprill CN, McDonald B. Diagnosing painful sacroiliac joints: A validity study of a McKenzie evaluation and sacroiliac provocation tests. Aust J Physiother. 2003;49(2):89-97.

4. Machado LA,Tulder M, Lin CC, Clare H, Hayden JA, Costa LM. The McKenzie method for chronic non-specific low-back pain (Protocol). Cochrane database of systematic reviews. 2012.

5. Donelson R. The McKenzie approach to evaluating and treating low back pain. Orthop Rev. 1990;19(8):681.